不思議体験#手のひら宇宙
寝たきりだった父が肺炎になり入院していた時、母や姉と交替でそばについていました。
危篤と言われた時、「死期の近い人からはアーモンドのような甘ったるい匂いがする」という説を思いだし、注意深く嗅いでみると、確かにほんのりと甘ったるい匂い。
そして、実の父が危篤の時に、そんなことを確かめてしまう好奇心の強い自分に少し引きました。
臨終の時、母と姉はとりすがって泣いていましたが、私は天井を見上げました。それは、父が見た夢を思い出したからです。
ある日「いや、おっかねえ夢見た」と父。私と姉が悲しんでいるのを上空から見ているのだけど、助けることができず、すごく焦った夢だと。なので、父がいるであろう天井を見上げ(わたしたちは大丈夫だよ)と伝えました。
お葬式が終わり、実家で寝ていた時のこと。シャラン……と、はっきりと錫杖の音がしました。真夜中ですし、近所からではなく部屋の中で聞こえたような気がします。
ああ、旅立ったのかな、と思いました。
次の日、もうお骨になった父は仏間に。
母と姉と私は、居間で一緒に寝ました。
夜中ふと目が覚め、一番窓際の私は、なんとなくカーテンを見ていました。
すると、ぼんやりと光る手のひらくらいの空間が目の前に現れたのです。
眼をこらすと、黒い楕円の中に銀河系のような渦巻きと、たくさんの星があります。
手のひらサイズの宇宙です。
(お父さんだ)
魂は宇宙の形なのだ、と思いました。
よく「人間自体が宇宙、ミクロコスモス」と言いますが、魂も肉体もミクロコスモスなのですね、きっと。
手のひら宇宙はすこし瞬いて、フェイドアウトしてゆきました。
この宇宙も、誰かの魂なのかもしれません。
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