念を飛ばす2
兄弟姉妹では稀に不思議な感覚が共有される事があるってどこかで読んだ事がある。
生き別れた双子が似通った人生を辿った末に巡り会ったなんて話も、昔テレビでやってたよね。
うちの弟は念を飛ばす。
それこそ、なんで今!?みたいなタイミングで。
そんな話。
僕の趣味は乗り鉄、散歩、寺社仏閣巡り、御朱印集めである。
もともと暦通りの休みという職種ではないので、不意打ちの様に休みが来るし、休みが無い時はとことん休めない。
その日は3週間ぶりの休みで、翌日からまた1週間休みが無いっていうタイミングだったと思う。
休みの日だというのに仕事の日と同じ様に6時に目覚めた僕は、ふと思い立って家を出た。
そうだ、散歩に行こう。
財布とケータイ、ハンカチを持って、家を出てから1時間半後には名古屋駅だった。
当時実家住みだった自分は家族LINEに、今日は名古屋で遊ぶと連絡を入れ、
モーニングを食べ、のんびり散策し、ひつまぶしを食べ、のんびり散策するといった感じ。
真冬だった事もあって日は短く、夕暮れ時になり、そのタイミングで
あ、熱田神宮に行ってない
と思った。
思ったからには行かなくてはならない。
今までも、そしてこれからも、僕は人生において"呼ばれる"と感じる様な経験が何回もあった。
家族LINEに熱田神宮に行ってから帰ると送る。
日もほとんど落ちた熱田神宮の参道は暗く、灯りは少ない。
お参りを済ませた僕は駅に向かって参道を歩いていた。
暗い中で、向こうの方から歩いてくる2人組が見える。
社務所とかも閉まった後だけど、こんな時間からお参りする人もいるんだな、と考えながら歩を進める。
2人組との距離が少しづつ近付いてくる中で、ふと思った。
あの2人組の片割れ、どこかで見た事がある...。
暗くて相手の顔までは分からない。
だが、絶対知ってるやつだという謎の確信。
顔は見えないが知っているはずだ。
歩を進める。
そして2人組とすれ違った時に相手の顔がみえた。
弟だ。
1人は全く知らない女の子だった。
でも、もう1人の顔は弟だった。
だがおかしい。
今日弟は15時まで用事があると言っていた。
それに弟はパンクファッションは着ない。
そしてなにより、通り過ぎた2人は僕の事など意に介さず参道を本宮へ向かって歩いていく。
僕は闇に消えつつある2人の背中を眺めながらケータイを取り出し電話をかけた。
少しのコール音の後、繋がった。
「どうしたー?」
脳天気な弟の声が耳に響く。
「なあ、お前今どこにいる?」
「いや、普通に家帰って来てるけど。」
やはり弟は家にいるのだ。
今通り過ぎたのは弟ではない。
他人の空似?いや、そんなハズはない。
「お前、熱田神宮の事調べてるだろ」
「お、よく分かったね、今熱田神宮の事調べてて行きたいなって思ってたわ」
弟の言葉に納得する。
つまりそういう事なのだ。
電話越しに僕のため息を聞いた弟は続けた。
「あ、もしかして飛んでた?」
そういう事なのだ。
弟は、帰りたい、行ってみたい、そう強く思った時、念を無意識に飛ばしているのである。
そしてまた、兄である僕はそれを受信しやすいのだ。
事の顛末を弟に説明しながら以上の様に納得する。
なんとまたはた迷惑な...。
その後、台湾ラーメンを食べた自分は新幹線に乗って帰った。
あのあと電話で弟に頼まれた赤福を買って。
念を飛ばす弟の話の第2弾でした。
こいつとの話はこれ以外にもいくつもあるのですが、話としてまとめやすいのがこの2つになります。
文才が欲しいもんですね。
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読んで頂きありがとうございました。