感想 ホテルローヤル 桜木紫乃 ラブホテルが舞台の話しですが、よく人間の営みが表現されていて面白かった。
北海度の釧路にある田舎のラブホテル、ホテルローヤルを舞台に展開する短編です。
第149回直木賞受賞。
最初のヌード写真を撮影するためにホテルの廃墟を訪れる。「シャッターチャンス」。
ホテルは廃墟なのですよ。
そして、最後の話し ギフト は ホテル誕生の秘話になります。
時系列が逆になって連なっている形です。
「シャッターチャンス」の主人公はスーパーの事務員。彼氏は怪我をした元スポーツ選手
写真で世に出たいと思い。恋人の裸を廃墟で撮影するという作品ですが・・・
こいつくず男です。
彼の口癖は挫折。
その姿が読んでいるうちに、廃墟になったラブホテルと重なってきます。
それは彼女にも伝染していきそうです。
この重苦しい雰囲気が良い。
ラブホテルの清掃員のおばさんを主人公にした『星を見ていた』
この作品はすばらしい
60歳の働き者ミコさん
具体的に月収が書かれていることで、その生活が可視化されます
夫は10歳年下で無職
子供は三人いるが音信不通
次男で左官をやっている子から三万の金が届き感動する
しかし、その子が人を殺害した犯罪者として逮捕され
ヤクザだとわかる
絶望する中、ミコさんは母親の言葉を思い出す
ホテルの女将からも声をかけられる
懸命に生きている人を他人は見捨てない。
ラブホテルの経営者という日陰の立場の人だから理解できるミコさんの痛みみたいなのもあるのでしょうね。
もう一つ、『バブルバス』も紹介したい
僧侶に読経してもらう約束が、相手のミスで中止になり
余った香典の5000円でラブホテルに行く中年の貧しい夫婦の話し
初体験のラブホテルに癒される
たった5000円で夫婦は何かから解放されて自由を満喫
きつきつの生活の中の5000円は大金なのです
『せんせえ』の二人の避難場所もホテル
このホテルは、もしかすると弱者の避難場所
大切なところになっていたのかなと思ったりします。
さすが直木賞受賞作品。
すべての短編に読み応えがありました。
2023 4 16
原作を読み映画を見る企画です