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書評 トヨトミの野望 梶山三郎  ほぼノンフィクションの凄い企業小説。こんな裏側があったとは知らなかった。

企業小説は、そんなに得意ではなく池井戸さんの「陸王」とか「下町ロケットシリーズ」くらいしか読んでいません。何となく嘘臭いからです。
しかし、本書はそういうのとは少し違った。
めちゃぐちゃリアルです。
というのも実際にあった歴史的な事実が、話しの中で語られていたからです。

愛知のトヨトミ自動車
これトヨタ自動車のことでしょう。

レース大好きの豊臣統一社長って、豊田章男社長ですよね。もろですよ。

世界 トップクラス の 自動車 メーカー、『 トヨ トミ 自動車』

豊臣秀吉にひっかけて、天下統一したから、豊臣統一ですよね。

実業家の夏野さんのあとがきが・・・

  本書 の 内容 の どこ までが 事実 で どこ までが フィクション なのか。   これ について、 巨大 自動車 企業 に 極めて 近い 経営者 は 99% が 事実 と 私 に 言い切っ た。

つまり、めちゃぐちゃリアルでした。
かなりの部分が真実なのでしょう。
昔のことは、私の年じゃわからないんだけど、Toyotaの米国での事故によるリコールの騒動とか
プリウスが、エコカーの方なのか、ガソリン車なのかでもとめていて
エコカーの方になったのでToyotaがどうにかなったのは、最近のことなので知っていたのですが、背後に熾烈なロビー活動と、リーマンショックで生き延びたToyota潰しの陰謀があったのは知らなかった。

武田という、たぶん武田信玄をアレにした優秀な社長が退任した後のことですが・・・
ずっと、そのまま武田路線でいきます。

強固 な トヨトミ も、 武田 が はずさ れ 経営者 が 代わる と どんどん 劣化 し て いく。

この現実はどんな企業にもあることだと思う。
その武田を外したのがトヨトミ一族なのだが・・・
このやり方は露骨。「ふざけるな!」と思いましたよ。

なぜ 2% の 株式 しか 持た ない 豊臣 家 が 重要 な 人事権 を 保ち 続け、 27 兆 円 企業 を 支配 し て いる のか?

これが不思議なのですが・・・
解説にはこうあります。

優秀 な ビジネスマン で あれ ば ある ほど、 会社 の 利益 を 第一 に 考える という のは、 実は 大きな 間違い で ある。 誰 もが まず 自分 の 利益 を 第一 に 考え、 会社 の 利益 は 二の次 なの だ。

だから、武田の信頼していた片腕の副社長は、会長に持ち株会社に移行することを武田が模索していることをちくったのだった。たった、それだけのことで利益倍増させた武田は切られるのだ。これが事実だとしたら企業として大損失なのです。


社長武田の社員への檄がいい。


社員 諸君 は なに も 変え ない こと が もっとも 悪い と 気づい て ほしい。 現状 維持 は イコール 堕落 です。 改革 に 意欲 の ない 頑迷 固陋 な 守旧派 は せめて 仲間 の 足 を 引っ張ら ない よう、 邪魔 を し ない で いただき たい


さて、彼らは車をどう捉えていたのか。ここもおもしろい。

一度、 手 に し たら 手放せ なく なる。 悪魔 の よう な 利便性 に どっぷり 浸かり、 抜け出せ なく なる。 みな、 古く なっ たら 買い換える。 新しい もの が 欲しく なる。 クルマ と 麻薬 は 同じ だ。 中国 も インド も ロシア も、 広がる 市場 は 無限 だ。 おれ は クルマ という 強烈 な 麻薬 を 世界中 に 広め て やる

こう武田の部下の中国方面の責任者は言う。


これに対するボンボンの豊臣統一のビジョンはこうだ。

自動車 メーカー は カネ より ロマン だ。 やはり 乗っ て 楽しい クルマ で ない と ダメ だ ね。 若者 が 憧れる クルマ を どんどん 出し て いか ない と 未来 は ない よ

すごく嘘くさい。いかにも…って感じがするよ。
彼の器は車の企画部長程度であるのがわかる。
だから、ロビー活動なんか必要ないと経費削減に動き窮地にたたされるのだった。

トヨ トミ は カネ を 作る 会社 じゃ なく て 自動車 を 作る 会社 です


理想主義者なのですよ、でも、それだと勝てない。
故に、武田時代を真っ向から否定するのだが、企業のトップとしてはどうなのだろうか?。

トヨ トミ 自動車 は 豊臣 家 の 血 の 結晶 だ。 それ が わかる のは 豊臣 家 の 人間 だけ だ

これが豊臣家の考え方だ。
トヨトミとは、一種の新興宗教のようなものだと武田は思っていた。

ビジネス は 戦争 な ん だ。 そして 社長 は 最高 指揮官 だ。 食う か 食わ れる か だ。 アメリカ 政府 が 本気 で 攻撃 に 出 たら 日本 の メーカー など ひと たまり も ない。

なのに、豊臣統一は危機感を持ってなかった。ロビー活動に価値を見出せず情報が入ってこない。
ここに創業者一族による支配の弊害が見てとれます。

富める者にお金が集中する世界が数年前から始まった。
ピケティなどの警鐘がそれである。

GAFA- グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェースブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の4社。
・・・が、世界を支配しています。マイクロソフトも入れるのかな?。
電気自動車、自動運転技術が当たり前になると、エンジン技術なんて、どうでもよくなると言っている人もいます。実際、時価総額ではテスラがToyotaなのですよ。

時代 の 変化 について 行け ない 産業 は、 企業 は 間違い なく 淘汰 さ れる。

Googleの自動車会社が、下請けのToyotaにボディを作らせる時代が到来するという未来予測もあります。実際、携帯電話の業界では、日本は部品工場なのです。

そんな時代に、創業者の血とか、モノづくりの理想とか言っていて、経営者としてやっていけるのか。責任は取れるのか。従業員を守れるのかと思ってしまう。本書にもあるように、世界は薄汚れていて、権謀術策の渦みたいな場所なのです。

本書は、企業がどうあるべきかを客観的に読者に見せてくれる構造になっていて
実際に起こった話しをリアルに肉付けし伝えています。
自動車業界に詳しくない私でも、世界のトヨトミ自動車がどこで間違ったのかはわかります。

それは格下のテスラの株式時価総額がToyotaを抜いたというニュースに反映されたのかもと思ったりもします。

2020 11/18





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