感想 95 早見 和真 彼らの時代、それは1995年。その輝きやら初々しさやらがすべて凝縮されていた。面白かった。
あなたたちの高校時代の話しが聞きたいと初恋の相手に似た少女は言った。
2015年だった。
それは1995年、彼が高校の時の話しである。
単純に、少女にとっては自分の父親は誰かということなのですが・・・。
とにかく面白かった。
人間の感情や友情の描き方が実に良い。
1995年という時代をポケベルとか、援助交際とか、オウム真理教や当時人気のドラマや音楽で表現するのはアリがちだし、正直に言うとピンとこなかった。
やたらと桜井幸子の名を連呼するので、ああ、そういえばそんな女優さんがいた気がする程度で、その時代の背景までは実感がわかない。
そういう時代を感じさせるエピソードや表現はやはり難解なのかなと感じた。
本書の主人公たちは、渋谷で少し不良ぽい感じで集まっていた男女の物語だ。
初恋の初々しさとか、喧嘩のシーンとか、仲間との友情とか、すごくリアルに描かれていて良かった。
印象としては、1995年と言われても実感がなく、安室ちゃんとか言われても、2000過ぎても彼女はいたし、その時代を象徴する感じはなく、2005年ということでもわかんなかったと思う。
時代とかは別にいいんだが、子供の喧嘩に拳銃が登場したり、彼女が妊娠したが、母親に反対され別れさせられたとか、えっ、そういう時代なのという感じはあった。ボストンバックに金入れて執事が、これをどうぞ的な示談金って今でもあるのか。
でも、そういうベタなシーンと洗練されたシーンがないまぜになっているのが本書の魅力だつたとも言える。
ださい大人になりたくないが彼らのモットーだった。
この言葉が印象に残った。
そうそう、僕も高校や大学の時、こんなこと考えていたなと思いだした。
でも、今の時代の若者はそんなことは感じないのだそうだ。
ということで1995年を選んだのか。
2005年でも良かった気がするのですが。
母親が、自己犠牲をし子供の為に生きるところの場面だが、確かに、この感覚は今は希薄かもしれない。こういう子供に依存する母の姿をネガティブに描いているのだが、今みたいに子のためよりも自分を優先する希薄な感じがいいかと言えば疑問符がつきます。
これが言えるのはこの時代の特権のような気がします。
でも、本当にこの物語を読んでて、自分を主人公に移入してると、そう感じる瞬間があるのです。
それほど、この物語は面白かったのです、少なくとも僕にとっては・・・。
2024 5 19