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感想 銀座四宝堂文房具店 上田 健次 創業は天保五年、地下には古い活版印刷機まであるという知る人ぞ知る名店銀座四宝堂。その文具店に来る客の物語。短編集。

号泣もの・・・という噂さだつたが、これでは泣けない。
本書は短編集だ。
本書を一言で表現するなら優しいということになるでしょう。

心の芯の辺りからポカポカ温かくなる作品です。号泣とか感動ではなく、僕は癒し系だと感じました。


創業は天保五年、地下には古い活版印刷機まであるという知る人ぞ知る名店銀座四宝堂。
その文具店に来る客の物語です。
たんたんと進行していく物語が中途を超えるとだんだん魅力を加算していく。人の優しさがそこには描かれていた。

最初の万年筆の祖母の愛情の話しはウルウルしそうになった。
確かに、これは感情を揺さぶられる。
母に捨てられ、祖母に育てられた。その祖母に対し初任給で贈り物をするのだが、そこに手紙を添えるために文具屋に来たのです。
過去が自然に温泉水のように沸き上がってきます。
構成が素晴らしい。

本書のパターンは手紙を大切な人に書くということで、その人との過去を振り返るという形式になっています。
その相手がみんな魅力的。

弓道部の主将に恋した副主将の話しとか
昔、世話になった料理人の大将への手紙とか
元妻の葬式でのスピーチ原稿
転職を決意した女性が勤め先の恩人に書く手紙

どれもいい話しばかりでした。
最初はかなり退屈な展開なのですが、読んでいくうちに飲み込まれていきます。
気がつくと銀座四宝堂文房具店にいるかのような優しい気分になれる。そういう作品群でした。

2024 9 30


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