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感想 最強のニーチェ入門幸福になる哲学 飲茶 とにかくわかりやすいニーチェの入門書。超人という言葉が禅思想に似ているのに気づいた。

哲学と言うと難解という印象がある。
カントやサルトルはかなりきつい。

僕は哲学が好きで、そのとっかかりはニーチェだった。
だからニーチェ本はやたらと読んでいる。
ニーチェの言葉は過激で力強い。だから好きです。わかりやすいのもいい。

本書は、たぶん、僕の知る中で一番ニーチェをわかりやすく解説した本だと思う。
女性に、先生が教えるという形式をとっています。
例えが秀逸で腑に落ちる。
中学生にでも理解できる内容になっている優れモノです。

著者は、哲学を次の二つの種類に分類している。本質を考える「白哲学」と、現実存在を考える「黒哲学」。ニーチェは「黒哲学」である。世間的には実存主義と言われています。

ざっくり言うと、ニヒリズム。つまり虚無が世界に蔓延している。それを克服する方として、「力への意志」や「永劫回帰」といったキーワードをニーチェは言っている。「永劫回帰」とは無限に同じことがループすることで、ニヒリズムの極限。
そのある部分を肯定することができる人が「超人」。今ここを肯定的するという思想だ。
つまり、未来も過去も関係なく、今、実際に存在している今が大切。それを大切にしようというのであり、それは禅の一期一会という思想と合致する。

「今この瞬間を力強く肯定する力」=強い意志を持った人間を「超人」と呼ぶ


どんな瞬間だとしても、強い意志で良しと肯定してみる。それだけで永劫回帰を吹き飛ばすことができるんだ。


この実存。これが大切なのである。

目に見えない価値観は、いつか壊れるものだとニーチェは言っている。

そして、その結果、人は空しくなり時間を潰すだけの人生になりがちということ。


これがニヒリズムです。

道徳や宗教などのありもしない価値観を信じて不幸になっていないか。人間は実存、現実の存在であり、産まれながらの生きる意味など持っていないが、すべてに意味価値がないとしてしまうと、人間はニヒリズム虚無主義に陥って生の高揚充実感を失ってしまう。



弱者が良く見える理由をこう述べている。

ユダヤ人は弱い民族だった。力では勝てないので空想上で勝とうとした。それが宗教だ。強いのは悪い、弱いのが良いという価値観が生じ、それは宗教を通して世界に広がった。これが道徳の起源である。我々の言う道徳の正体とは実は奴隷を弱者を良いとする歪んだ価値観に基づくものなのであり、奴隷道徳だと言える。この道徳観は嫌なこと、みじめなことに文句を言わずに受け入れる人が良いという不自然なものであるため道徳にとらわれている人間は人間本来の生き方ができなくなるのである。


人間は現実の存在である。見たり触れたりできない非現実のものに振り回されて生きるのは辞めようだったよね。



奴隷にされた弱い民族のルサンチマン嫉妬が道徳の起源であるとニーチェは考えた。



社会から押し付けられた価値観はそれがどんなに常識的に見えようと所詮は解釈の一つであり、後から作られた非現実のものに過ぎない。それなのにそれをまるで世界に元々存在している覆しようのない絶対真理のように思い込んでしまうことが不幸のはじまりなのだ。


これが黒哲学の神髄。

実存哲学の核心はあなたという現実存在、実存を蔑ろにする非現実な価値観の正体を暴きたて破壊することにある。

ようするに、僕たちが妄信している道徳はもともとは宗教がベースになっている非現実の空想である。それに雁字搦めに支配された生き方は不幸であると言いたいようです。

宗教を基盤にする道徳を非難する言葉として、神は死んだという言葉がニーチェにはあります。
これは目に見えない宗教を基盤にした道徳による拘束を非難したものであり、今なら空気とか、雰囲気とかなのでしょう。みんながこうしているから、違うけどやるか・・・みたいな感性が人を不幸にするという解釈なのかなと感じました。



2024 11 22


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