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感想 あの花が咲く丘で君とまた出会えたら   汐見夏衛 戦争がモチーフなのに、戦争の空気が伝わってこない。これだと、ただの反戦プロパガンダです。

中学生の少女がタイムリークし戦争時代に・・・。

食堂で働きながら、特攻隊の兵士たちと交流し、隊員の一人と恋に落ちるという話し。

モチーフは反戦だ。

国のために、死ぬのが当然と考えている彼らに対する違和の表明が本書の核となる。

このモチーフに僕は共感するが、しかし、薄っぺらさを感じた。
うまく伝えきれていない。

というのも、戦争時代の空気が伝わってこないからだ。
それは、たぶん細部が描かれていないのが原因だと思う。

話す言葉もそうだし、隊員たちの態度や考えも現代的な側面が強い。
これでは思いを伝えるのは厳しい。

戦争中の理不尽を伝える象徴する場面を二つ例にして指摘してみる。

一つ目は、日本は戦争に負けたらいいんだと彼女が叫ぶシーンだ。
警官に聞かれ殴られる。
確かに、今の感覚なら少女や、それを庇う特攻の兵士まで殴るのは問題だが、この時代の空気で、これほど反抗的で何度も何度も自分は間違っていないと主張するのだから、殴るだけですむはずがなく、普通は逮捕され、家族全員逮捕ということになるのだと感じる。
このシーン、いかにも警察が横暴という印象付けをしているが、時代の空気を想像したら、この程度のわけないだろと思ってしまう。逆に、この警官はびびって退散したのだから職務放棄となる。

次に特攻隊の隊員が逃亡し捕まった時、そのまま逃げるようにみんなが賛同するシーン。ありえん。身体に障害がある許嫁が心配なのはわかる。しかし逃げても捕まる。彼の婚約者はよりいっそう酷いことになると思うが、これを美談とするのは薄っぺらさを感じざるおえない。

さすがに空襲のシーンは盛り上がったが、それでも、そこに戦争が描かれているという感じではなかつた。

特攻隊の隊員のキャラや、彼女を保護してくれた食堂の女性の描き方など良い部分も多いし、特攻隊の隊員と彼女の恋の部分も良いのだが、かんじんの戦争がこれではきつすぎる。

著者の主張は次の言葉に集約されている感じがする。
それを紹介することで僕の感想は終わりにします。

同期の桜という歌だ・・・、何という歌詞だ。聞いているだけで怒りがこみあげてくる。散るのは、死ぬのは覚悟の上だ。国のために美しく散る。そんな内容の歌詞だった。こんな歌で政府は軍人たちを洗脳しているのだ。靖国神社と言う言葉も出てくる。たしか戦没者を祀った神社だ。・・・参拝することが外国から批判されたりしている神社だ。この歌は特攻で死んだらその神社の桜の花になって、そこで再会しようというのだ。ほんとバカみたい。





2024 8 9



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