感想 昆虫の惑星 アンヌ・スヴェルトルップこの世界にとって大切なのは、人ではなく虫である。
本書は、北欧の昆虫学者が書いた昆虫についての本である。
正直に言うと虫は嫌いである。
ハエとか、蜂とか、蜘蛛、ゴキブリ。近づきたくもないし近づかない。
この本を読んで少し認識が変化した。
人間が絶滅しても世界はたぶん何も変わらないだろうが、昆虫が絶滅したら人間は生きていけないということを実感した。この惑星は人だけのものではなく、すべての生き物と分かち合っているのであり、いらないと思われる害虫ですら何らかの生態系の一部に組み込まれていてとても価値があるのだ。虫を嫌悪するのではなく、虫と共存していく方法をこれから人類は模索していくべきなのかもしれません。
個別の昆虫について言及されている。
面白かったエピソードを2つだけ紹介する。
ショウジョウバエの繁殖力
天敵がいない状況なら、1匹が100個くらいの卵を産む。1年後には25世代の計算です。1000000000000000000000000匹くらい産むことになるそうです。
このハエを固めて丸めたとする。その玉の直径は地球と太陽の距離を超えるとか。これすごくないですか。ただし、彼らを捕食する生き物は多く、実際にそうなることはない。にしても、この繁殖力は驚きです。
ゾンビベビーシッターの話し
テントウハラボソコマユバチは寄生バチです。メスは産卵管をテントウムシに差し込んで卵を産む。20日かけて幼虫はテントウムシの内臓を食べていきます。
セナガアナバチは、ゴキブリの胸に産卵管を差し込む、数分にわたって麻痺させます。おとなしくなるとゴキブリの頭に針を刺す。神経毒を二か所に注入、これでゴキブリは、もう自分では動けなくなります。幼虫はゴキブリの体内で成長していき、最後はそれを餌にし・・・。
なんか映画みたいですね。寄生して餌にするとかありそうです。
次は、虫は嫌われているけど悪なのか。そのことについて書かれているところを見ていきます。
白蟻は害虫なのか?
ある実験が行われた。白蟻のいる小麦畑と白蟻を農薬で駆除した小麦畑。どちらが収穫がいいのか調べた。駆除しなかったほうが36%も収穫が良かった。蟻は地下に水路を作って水をいきわたらせるからだそうです。
地球の清掃業者としての虫
草食動物が食べる植物は10%にすぎないのだそうです。残りは枯れる。動物の屍骸や糞。植物の腐ったものを食べているのが昆虫である。このことはとても重要だ。昆虫のおかげで、これらの有機物にふくまれる栄養分が土にかえるのだ。窒素や炭素が土にからなければ、そこで新しい植物は育たない。つまり、虫がいなければ地球はまわらない。
最後は、不思議な話しを・・・
若返り
瓶の中にカツオブシムシの幼虫を入れたまま五か月間忘れてて机の引き出しに入れていた。すると、まるで時間が戻ったように、その幼虫は若返っていたらしい。この虫の生涯サイクルは二か月、普通、五か月も放置されていたら死ぬはずなのだ。
幼虫期の後期から最初期へと生涯を逆行したと本文にはある。
タイムマシンですよ、なんか生命の神秘ですね。
国際的なデーターによると、過去四十年で人の人口が倍増したのとは対照的に、昆虫の数はほぼ半分になったのだという。これは深刻な問題です。だって、この地球は人がまわしているんじゃなくって、昆虫がまわしているからですよ。昆虫がいなくなったら大変なことになります。
2022 6 18
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