
感想 リカバリー・カバヒコ 青山美智子そのカバの遊具に触れると、自分の治したい所が回復するという都市伝説がある。人呼んでリカバリー・カバヒコ。
5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで”リカバリー・カバヒコ”。アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。
短編集です。
SFではありません。
この都市伝説を信じた人たちが、傷ついた身体の一部を回復させる物語です。
その大半は心に起因しています。
プラシーボ効果に似ています。
冒頭の奏斗の頭という短編がいい。
中学までは天才と言われていたが進学校に進学すると、下から数えて・・・の成績に落ちます。
カバヒコの伝説を聞いた奏斗は「頭脳回復」を願ってカバヒコの頭を撫でる・・・
のですが・・・・
成績がそんなことで上がるわけがない。
彼は変わります。
そのきっかけは、このカバと同級生の女子。
彼は彼女は同類と勝手に思う。しかし、彼女が優等生だとわかり裏切られた気分になる。
そんな彼女のセリフがいい。
誰かに勝ちたかったんじゃなくって、私が、がんばりたかったんだ。
だから死ぬほど努力した。
苦学生の彼女は彼よりも学習環境は過酷で、塾に通ってないどころか、学費のためバイトをしている。兄弟が多く自分の部屋すらない。なのに、彼女は彼のように腐らずに勉強した。それで結果を残したのです。
彼は母に褒めてもらいたかった。みんなに認めて貰いたかった。それで勉強していた。
でも、成績が下がり腐った。
それはベクトルが他者に向いていたからだと思う。彼女のベクトルは自分に向いていた。自分のために努力した。その違いを彼は知ったから変われたのだと思います。
勇哉の足 も 面白い話しでした。
駅伝の選手になりたくなくて足が痛いと嘘をつくと本当に足が痛くなったという話し。
整体師の先生の話しが良かった。
元に戻るのかと聞くと、そうはならないと言うのだ。
痛くなったというその経験や記憶が付け加わる。
つまり、回復後の君は、その前の君とは違う君なんだという。
先生はこう言う
足が痛くなる前にはわからなかったことが、わかってきたんじゃないのかな
駅伝で恥をかきたくないという気持ちしかなかつた彼が、回復後、彼のかわりに選手となつた鈍足の少年の練習に加わり、そこで何かしらの学びがあったのです。
優しい物語たちでした。
すごく癒されました。
2024 3 17
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