『海のはじまり』第2話 明かされる弥生の過去と新たな選択肢
フジテレビ系列で月曜9時から放送中のドラマ『海のはじまり』。このドラマは、『silent』や『いちばんすきな花』の脚本家・生方美久の最新作である。
※この記事には、ドラマ『海のはじまり』の内容が含まれます。『海のはじまり』はFODとTVerで配信中です。
あらすじ
夏の告白
第1話で、夏は大学時代の恋人・水季の娘の海が自分の子であることを知った。第2話で、夏はそのことを現在の恋人・弥生に告げる。それが以下のシーンだ。
弥生の涙の訳
弥生の涙の訳は、その後明かされる。弥生には中絶の経験があったのだ。相手はスーツを着た男。おそらく社会人だろう。中絶を決めた理由は明かされていない。「父親がいないとかかわいそうだし」という弥生の言葉からは、2人で育てられない事情があったことがうかがえる。男には家庭があったのかもしれない。
「殺したなんてことは……」「そのころ、まだ20歳とかでしょ?そういう選択することも珍しくないと思うし、悪いことじゃない……」。夏のことを気遣ったかのように聞こえた弥生の言葉は、弥生が自分に言い聞かせているようにも思える。
「歳とか関係ないし、自分の意思で同意したし。もっと話し合えばよかったって、もっとできることを考えてれば、一緒に育てることだって…」。夏の言葉が弥生に突き刺さる。弥生は中絶したことに罪悪感を抱えている。弥生が同意書に自分の名前を書いた時、横に置かれていた飲み物の影が揺れ動いていた。まだ揺れ動く気持ちの中、弥生は中絶を決めたのだ。弥生は、納骨堂で中絶した子を供養していたことが描かれる。弥生は何度も納骨堂を訪れていたようだ。位牌に手を合わせた後、弥生はある決意をする。
「もし、月岡君がお父さんやるってなったら、私がお母さんやれたりするのかなって」「決めるのは海ちゃんだけど、選択肢の中に入れてもらえたらなって」。弥生は夏に電話でそう告げた。弥生は選択肢をできるだけ広げて、相手とともに、その中から一番いいものを選ぶ人である――前回の記事でそう述べた。弥生がそんな生き方をするに至ったのには、この中絶の経験があったからなのではないか。
海の選択
そんな弥生に押されて、夏は海に会いに行く。手土産に鳩サブレを持って。海はまだ学校から帰宅していなかった。朱音はまだ、夏に警戒心があるようだ。ところが、夏が手土産の鳩サブレを差し出すと朱音の顔がほころんだ。水季も海も鳩サブレが好きだったからだ。
夏は思い出す。水季が大学の講義中にこっそり鳩サブレを食べている姿を。その鳩サブレを水季は自分で買ったという。鳩サブレはお土産でもらうものと思い込んでいた夏にとって、それは驚きだった。前回の記事でも述べたように、水季は自分で選ぶ人なのだ。水季は鳩サブレを3枚取り出し、夏に選ばせる。「違うの?」と戸惑いながら、夏は一番右の鳩サブレを選ぶ。本当はたった一つしかない選択肢を水季は夏に選ばせた。
「水季からね、海のことで、これだけは絶対って言われたことがあるの。海に選ばせてあげて。正解を教えるより。自分の意思で選ぶこと。大事にさせてあげてって。手引っ張ったり。横に張り付いたりしないで。後ろから見守ってあげてほしい」。朱音は夏にそう言った。この言葉には、海にどういうふうに人生を歩んで欲しいかという水季の考えが表れている。そんな水季の海に対する姿勢は第1話冒頭の海岸のシーンでも描かれた。水季の先を歩いていく海に水季は「行きたい方行きな」と声をかけ、海を後ろから見守っていた。水季は、海がどう生きるか自分で選ぶことを願っていたのだ。
海が学校から帰宅する。海は一瞬戸惑いながらも夏に抱きつく。夏は驚いて固まる。そんな海を見て朱音は小さく微笑んだ後、寂しげな表情を浮かべる。朱音は海の選択に気づいたのだ。海は夏と生きていきたいと思っていることに。海はなぜそう思うのか。第2話の冒頭に手掛かりがある。それは水季が海と2人で暮らしていたときのことである。
この時、海は初めて父の存在を知らされた。父に会いたいかと問われた海は、「海とパパ、会ってほしい?」と聞き返す。その答えは、自分より他人のことを考えてしまう夏によく似ている。水季は海の問いにどう答えたのであろうか――それはここでは描かれない。だが海は夏に会いに来た。
水季の「パパが2人いる人もいるの。いていいの」という言葉は、夏のことが念頭にあったのかもしれない。夏にも父が2人いる。実の父と母の再婚相手の和哉(林泰文)である。これは母が2人いてもよいということだ。弥生は、夏に新しい恋人がいることを知っていたのかもしれない。海が選ぶのなら、そして夏とその恋人が選ぶのなら、夏の恋人が母になってもよい。水季はそう思っていたのではないか。
このドラマは選択にまつわる話である――前回の記事でそう述べた。海は夏と生きることを選択した。海が望むなら弥生は海のお母さんになろうとしている。夏はどういう答えを出すのか。それは3話以降で描かれるのだろう。
お知らせ
『海のはじまり』について書いた記事は、以下のマガジンにまとめています。
『海のはじまり』の脚本家・生方美久によるドラマ『いちばんすきな花』について書いた記事は、以下のマガジンにまとめています。