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『海のはじまり』第6話 なぜ水季は海を産んだのか? 弥生がノートに書いた言葉
フジテレビ系列で月曜9時から放送中のドラマ『海のはじまり』。このドラマは、『silent』や『いちばんすきな花』の脚本家・生方美久の最新作である。
※この記事には、ドラマ『海のはじまり』の内容が含まれます。『海のはじまり』はFODとTVerで配信中です。
あらすじ
夏休みを利用して、月岡夏(目黒蓮)が南雲家で海(泉谷星奈)、朱音(大竹しのぶ)、翔平(利重剛)と一緒に過ごす1週間が始まった。最初に迎えた朝、目が覚めると目の前にすやすやと眠る海がいて、びっくりして飛び起きる夏。「起きてねー」と翔平が顔をのぞかせ、南雲家に来ていたことを思い出す。ようやく海も、もぞもぞと目を覚ます。
朝食後、自信満々に髪を結おうかとたずねる夏に「やって!」と喜ぶ海。百瀬弥生(有村架純)に教えてもらった三つ編みを実践しようする夏だが、海に「編み込みがいい!」と言われてしまう。やり方がわからず困る夏。三つ編みだけ練習してきたという夏のことを朱音はクスクスと笑う。
その後、夏と海はかつて海と水季(古川琴音)が暮らしていたアパートへ向かう。すでに部屋は引き払われているのだが、大家さんの計らいで部屋の中に入れてもらえることに。2人で住むには狭い殺風景なワンルームを見渡し、夏は、水季と海が2人で暮らしていた生活に思いをはせ…。
水季が読んだ弥生の言葉
8月5日放送の第6話「やっぱり産む事にした…出産を決めた本当の理由」では、水季がなぜ海を産んだのかが描かれた。海は一度は子供をおろすことを決めていた。水季は自分が人に影響されないと夏や朱音に言ってきたし、水季自身もそう思っていた。そんな水季が自分の決定を変えたのはなぜか。それは、弥生の書いた言葉を読んだからだった。
妊娠9週目で中絶しました。強い罪悪感に襲われています。彼がああしてくれたら、母がこう言ってくれたらと罪悪感を他人のせいにしてしまい、そんな自分にまた落ち込みます。まるで自分が望んだように振る舞っていただけで、実際は他人に全てを委ねていました。人に与えられたものを欲しかったものだと思い込むのが、私は得意すぎました。後悔とは少し違う。でも、同じ状況の人に、同じ気持ちになってほしくありません。他人に優しくなりすぎず、物わかりのいい人間を演じず、ちょっとズルをしてても、 自分で決めてください。どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです。あなたの幸せを願います。
これは、「ひかり産科クリニック」に置かれていたノートに弥生が書いた言葉である。弥生はこのクリニックで子供をおろしていた。第4話で描かれたように、弥生の恋人の浅井悠馬(稲葉友)は、弥生が子供をおろすのを前提として話を進めた。それを聞いた弥生は、1人で子供を産もうと母に相談した。しかし、弥生の母は、まともに取り合おうとしない。結局、弥生は子供を産むのを諦めた。
悠馬が一緒に子供を育てようと言ってくれたら、母が1人で子供を育てることを肯定してくれたら――そんな弥生の気持ちがこの言葉には表れている。その時のことを「まるで自分が望んだように振る舞っていただけで、実際は他人に全てを委ねていました」と弥生は振り返る。もちろん、1人で子供を育てるのは大変だ。周りの支えがあるのとないのとでは大違いである。それでも、やはり自分で決めなければならない。それは自分の幸せのため。そう弥生は考えているのだ。
水季も子供をおろすために「ひかり産科クリニック」に来ていた。水季と弥生は同じクリニックに通っていたのだ。診察を待つ間に、水季はクリニックに置かれていたノートを手に取る。ノートに書かれていた弥生の言葉を読んだ水季は、父・翔平から渡されていた母・朱音の母子手帳を読んでから、子供を産むかどうか決めることにした。結局、水季は海を産んだ。
水季が海を産んだ理由
水季はなぜ考えを変えたのだろうか。それは、自分の選択を人のせいにしたくないからだ。水季は子供をおろすことを自分で決めた。だが、そこには夏への配慮があった。それは水季が第4話で、「迷惑かけたくない」「責任を負わせたくない」と翔平に話していたことからもうかがえる。水季が妊娠した時、水季も夏も大学生であった。夏は「親に心配かけないように名のある会社に就職したい」「面倒くさいことを避けて、波風を立てずに生活したい」と水季に話していた。そんな夏の言葉が水季の子供をおろすという選択に影響を与えたのではないか。
弥生の言葉を読んだ水季は、自分が弥生と同じように「物わかりのいい人間を演じていた」ことに気づいた。このまま子供をおろしたら、自分はそのことを夏のせいにしてしまう。そう水季は思ったのではないか。「どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです。あなたの幸せを願います」。水季は大きくなった自分のおなかに触れながら、弥生の言葉を口にする。水季は自分の幸せのために、海を産むことを自分で決めたのだ。
夏に何ができるか
子供を産むかどうかを決めるのは女性だ。だが、その責任はあまりにも重い。人に与えられたものを欲しかったものだと思い込むのが得意だった弥生はもちろん、他人には影響されないと思っていた水季も、周りの人の意見や態度、社会環境の影響からは逃れられない。そんな弥生や水季の気持ちに夏は向き合おうとしている。
すでに亡くなった水季と向き合うため、夏は水季の同僚・津野晴明(池松壮亮)に水季が生きていた時のことを尋ねる。話が病気で苦しんでいた時のことに及ぶと、津野は「掘り返さないでください」と涙ぐむ。「嫌です」。夏は謝りながらも、初めて津野にはっきり自分の思いを伝えた。「月岡さんより僕の方が悲しい自信があります」。そう言う津野は、どれほど悲しい経験をしたのだろうか。
津野が自宅で見つけたヘアゴムを海に見せる。それは海のヘアゴムだった。「付ける?」と津野に聞かれた海は、「うん」と答える。津野は海の三つ編みを解いてヘアゴムで髪を束ねる。海の三つ編みを編んだのは夏だった。束ねた海の髪は三つ編みのおかげでふわふわになっている。夏の編んだ三つ編みは無駄ではない。たとえ夏が海を育てることになっても、海が津野と過ごした時間は決して無駄ではないのだ。
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