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あゆみの覚醒〜運命の罰ゲーム

教員になって3年目、その後の私の教員人生の方向性を決定づけた(多分)、大きな出来事が起きた。

罰ゲーム

初めての高学年で、特別活動に関わり始めて、学級経営に情熱を燃やしていた。素敵な先輩たちのクラスに負けないような優しさと思いやりに溢れるクラスを作ろうとしていた。
クラスの親睦を深めるゲームをしていたと思う。ミスが何回か重なると全員の前で「罰ゲーム」をするルールになっていた。
学級経営の成熟度合いによっては、悪い方に向かったりもする緊張するやつだ。当然、罰ゲームをする羽目になって、人前で恥ずかしい思いをしたくない気持ちが強い子になったら、無理強いをしないのが素敵なクラスだが、もちろん、その場は盛り下がる。
あゆみは、比較的おとなしい子で、どちらかというと目立たない属性の子だった。そのあゆみがミスを重ねて、罰ゲームに該当した。クラス全員が、名前を連呼して、囃し立てながら、彼女を見つめる。
あゆみは、教室の床をじっと見つめて、葛藤していた。
囃し立てていた連中も、「これは、配慮するやつか?」っていう感じになっていたと思うし、私も、手を差し伸べるべきか検討し始めていた。
両頬に手を当てていたあゆみが声を上げた。

わかりました!やります!

そして、教室の前に立ち、
「ゾウさんをやります!」と高らかに宣言し、右手を垂らした。
左からゆっくりと大きくスウィングさせて、「ゾーーーーーーーーーーおさん」
今度は、右からスウィングさせて「ゾーーーーーーーーーおさん」
それを繰り返して、「おーーーーーーーはなが、長いのね」と体を大きく使って歌った。
歌い終わると、教室が割れんばかりの拍手と感性が湧き起こり、あゆみを讃えた。
あゆみとクラス全員、もちろん私も、みんな笑顔でこの出来事を喜んだ。
この日を境に、あゆみはクラスのムードメーカーに変貌していった。自己主張もしっかりできるようになり、私に対して意見を言うこともあり、学級経営上の女子の要となった。

1年後、あゆみがカラオケスナックの店長になった話は、また別の機会に。

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