『小鳥とリムジン』感想(ネタバレあり)
書店で温かな装丁が目に留まり、何気なく手に取った『小鳥とリムジン』
しかし、ページをめくるごとに、想像以上にリアルな物語が広がっていました。
結論から『諦めてしまいそうになるほどの生きづらさや人生の過酷さの中で、確かな希望と愛を感じさせてくれる作品』
主人公・小鳥の過去はとにかく悲惨。
母からの性的虐待があったと知ったとき、温かい装丁からは想像できない生々しい描写に驚きました。
自分が当事者ではないため、どんなに共感したくてもその痛みの深さまでは完全にはわからず。
男として、そして異なる性別の視点から想像する限界を感じつつも、文章から伝わる怖さや屈辱感が強烈で、胸に響きました。
小鳥には児童養護施設や介護経験、そして友人との死別といった辛い過去があり、いくつかの部分は自分にも重なるところがあり、自然と彼女に共感する場面も多々ありました。
そこに登場する理夢人。
まさかの人かい!
笑ってしまったけれど、この男が本当に太陽みたいにいい奴なんですよ。
ラブホテルで生まれ、トランスジェンダーの『オジバ』(おじさんかおばさんか分からないから)に育てられた彼の生い立ちがまた独特で、多様性の豊かさを感じました。
二人が初めてリムジン弁当(理夢人が経営してる弁当屋)で出会い、亡きコジマさん(小鳥の親父)を思い返しながら小鳥が涙を流す場面では、こちらももらい泣き。
理夢人が「怒りとか悲しみは確実に内臓に蓄積される」と語るところは、まさにその通りだと実体験と重ねながら頷いていました。
小鳥が性的虐待で性に対する認識も歪められていたのも特徴的でした。汚く醜い行為の認識だけでなく、親友・三船との別れの描写にの前に表れていたのが印象的でした。
小鳥は傷つきながらも懸命に生き次第に親友の三船のことを異性として好きになっていく、でも親友はどこまで行っても、打ち明けても親友。
そんな親友との突然の死別が世の中の過酷さや残酷さを目の当たりにした感覚でとても切なかったです。
また、「ヘテロセクシャル」「シスジェンダー」といった用語が出てきたことで、いわゆる普通とされる性自認も、実は単なる一つのカテゴリに過ぎないと知り、学びも得られました。
凹凸。
表現が独特で今まで見たことなかったので面白かった。
性的虐待はリアルに描かれる一方で、こうした形で表現しつつ、ファンタジーな内容で描かれてるいるのも、愛を感じて良かったです。
中盤の章でこの言葉を表記し、終盤で言葉が深い意味と愛ある行為として描かれているのも納得でした。
一人の女性が過去の辛い経験を長年抱えながらも乗り越え、大切な人と出会い、愛を育む姿は、現実では少ないかもしれないけれど、それでも諦めずに進み続ける小鳥の姿には本当に感動しました。
性について、そして女性の気持ちについてもっと学ぶ必要があると感じました。
教育本としても素晴らしい一冊になると深く感じました!
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