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#119 [読書レビュー]愛なき世界 上・下(三浦しをん)(中公文庫)

「愛なき世界」というタイトルから、内容が全く想像できませんでしたが、好きな作家さんなので買って読んでみました。そしたらなかなか面白かったです。

東京大学の研究室の研究生が植物栽培の研究を描いたストーリーと、東京大学の近所の洋食店の見習いの青年・藤丸が、研究室に料理をデリバリーしていく中で、研究生の一人・本村さんに恋に落ち、恋模様を平行して描いています。

本村さんのシロイヌナズナに対する偏愛が半端なくて、藤丸との恋愛は存在しない。東大生物学研究室は人間同士の恋愛がない世界であるということでした。なので、藤丸の恋は実ることはありませんでした。ネタバレ失礼。自分より二回り下の、Z世代の感覚としては普通なのかなと思ったりしました。

研究室のほかの学生や、教授、洋食店店主など、それぞれのキャラが立っていて、登場人物同士の掛け合いも面白かったです。

三浦しおんさんの長編小説は、「舟を編む」や「風が強く吹いている」や、「神去なあなあシリーズ」などに共通するように、辞書とか、駅伝とか、植物とか、林業とか、ニッチな分野の何かに対して真剣に取り組む姿が描かれていて、そこに出てくる登場人物に美しさを感じます。そして、笑いもそこここに散りばめられています。何かに一生懸命没頭する姿は美しくてかっこいい。読後感が気持ちいいのはそういう理由があるのかなと思いました。

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