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人生を再発見するような場所「シューマッハ・カレッジ」

わたしがSchumacher College(シューマッハ・カレッジ)の体験プログラム
Schumacher Experience(シューマッハ・エクスペリエンス)に参加したのは、ちょうど1年前の2023年7月のこと。

実は、4ヶ月間にわたるヨーロッパ旅のなかで、いちばん勇気がいるのがこのプログラムへの参加だったのですが、「勇気の向こう側には、必ず想像以上の未来が待っている」を本当に体験した機会でした。


シューマッハ・カレッジってなに?

シューマッハ・カレッジはイギリス西部トットネスに位置する全寮制の大学院大学。「Small is beautiful-人間中心の経済学-」を著した経済環境学者E.F.シューマッハの教えを元に、インド人思想家サティシュ・クマールが創設した学校です。在籍している学生は50〜70人ほどで、卒業生は2,000人以上。

学校の特徴を簡単に挙げると、こんな感じです。

●人の幸せと地球の未来を前提に考える「新しい経済学」を学べる
●目的は、エコロジカルでサステナブルな社会を作ること
●「体験」と「体感」を通し、日々みんなで考えながら学んでいく
●住み込みで、一緒に一つのコミュニティとして生活している
●食事はベジタリアン、その6割はガーデンから採れた野菜を使っている

とはいえ、この学校は「頭で理解する」というよりは、「頭と心と身体を使って体感する」ような場所なので、説明がとても難しいのです。

けれど、たった5日間とは思えないほどに密度の高い日々で、同時期に参加していた日本人メンバーは全員、その経験を自分の中にとどめることなく周りにシェアをして、新しい一歩を踏み出していったので、何かしら背中を押すエネルギーをくれる場所だったことは確かだと思います。

ここからは、実際にわたしがこの場所で体験したことを書いていこうと思うので、読んでくださった方にも何かヒントになることがあれば嬉しいです。

なぜシューマッハ・カレッジに行こうと思ったか

わたしの友人が、ちょうどこの1年前にシューマッハ・カレッジを訪れていたのを知って、話を聞いたことがきっかけでした。FBの投稿を見た後、創設者であるサティシュ・クマールさんの本を読んだら、「この人に会いに行かなきゃ!」と直感的に思って、とにかく情報収集したのを覚えています。

その人が参加していたのはソーヤー海さんのツアーなのですが、たまたま2023年は開催がなくて。わたしはその年にデンマークに行く予定だったので、どうしてもそのタイミングで行きたくて、数少ない体験談や公式サイトを眺めて、どうやったら行けるのか一生懸命探しました。

(そのとき、日本語の体験談とかがあまりなくて困ったので、そのときわたしが欲しかった情報を思い出しながら、まとめてみました。)

不安MAXで到着したシューマッハ・カレッジ

わたしは今回直接サイトから、しかも一人で申し込んだので、そもそも日本人は誰もいないかもしれないという状態。コースに関する事前情報もほぼなくて、デンマークに3ヶ月いたとはいえ、大学院大学のイギリス英語がわかるか不安でいっぱいだったのです。

わたしがいちばん恐れていたのは、イギリス人のネイティブ英語がわからなくて困ることだったけれど、他にも「仲良くなれる人がいるかなぁ」とか「授業中の指示がわからなかったらどうしよう」とか、「ペアワーク困らないかなぁ」とか、「ご飯一人だったらどうしよう…」とか数えれば数えるほど怖いことはたくさんありました…。


そして、イギリスに到着した翌日、ロンドンから約3時間かけて到着したトットネスは、駅の改札もなくて、本当に小さな田舎町という感じでした。

トットネスの駅

午後からのプログラムだったので、近くのカフェで軽くランチを食べてからバス停に。何人か人がいたのでどきどきしつつも声をかけてみたら、なんと同じプログラム! 一緒にバスに乗り込みました。

そうしたら、まさかの同じタイミングでの開催プログラムが2つあって、一緒にいた人たちはチェックイン場所がわたしとは別だったんですよね…。(シューマッハの体験のやつって言ってたのに…?!って思ったけれど、後半合流するプログラムだったからある意味合ってはいた)

というわけで、わたしはしっかり降りるバス停を間違えました…

受付に行ったら、「あなたのコースはここじゃないわ」って言われて、なんとシューマッハ・エクスペリエンスの受付はそこから歩いて15分以上…

同じ状況だったブラジル人のお姉さんと、台湾からきていた日本人の女の子と3人でてくてく。広い敷地を、重い荷物を抱えながら歩きました(そして地面がぬかるんでいて、思いっきりすべった泣)。

間違った方の受付。可愛いから許す(?)
ダーティントンの敷地は広い

そうしてやっとのことで到着したシューマッハ・カレッジ!

3ヶ月デンマークの学校で学んだ後、ヨーロッパ旅もしてきているから、かなりぼろぼろの状態だったこともあり、ひとまずシューマッハ・カレッジに到着しただけで「やっと着いたーー!!」ていう達成感でいっぱいでした。

入り口の写真を撮り忘れたので看板を…

で、プログラムの受付をしていたら後ろから声をかけられたんです。

「日本人の方ですか?」(日本語)

え!

え?!

えーーーー!!!

どういうことーー!?

「今回日本人の方多いですね〜
3分の1は日本人かもしれないです。珍しい!」(日本語)

それまで張り詰めていた緊張感が一気に溶けて、なんだか拍子抜けしました。

結局、Schumacher Experienceの参加メンバー24人のうちなんと9人が日本人。他にはブラジル人・ペルー人・イギリス人・オランダ人・スコットランド人・ベルギー人、香港人など、正直英語ネイティブの人の方が少ないプログラムでした。

しかもこのときのボランティアスタッフは日本人の方だったのです…。


結局、行く前に感じている不安なこととか恐れていることって、実際起きる可能性のほうが低いんだなって思いました。

日本人がいたのはもちろん、みんな1人で参加していたので、ご飯も国籍関係なく色んな人たちと食べていたし、夜はみんなで歌ったり踊ったりめちゃくちゃ楽しい時間が生まれていました。

お天気が良いとランチは外で食べたり
3日後くらいにはこんな感じになっていました

加えて、今回は英語ネイティブの人のほうが少ないということで、ファシリテーターの人もスピードを落として話してくれたり、授業のレコーディングもさせてくれたりして、ものすごく思いやりを感じるグループでした。

”Schumacher Experience”とは?

わたしたちのプログラムは、1週間でシューマッハのプログラムをざっくり体験できるというものだったので、サティシュのお話もあるけれど、大学院の授業もいくつか経験できるというものでした。

プログラムを構成する要素は大きく3つ。
①シューマッハ・カレッジの体験授業
②サティシュ・クマールのお話
③それを取り囲むプログラム

長くなりすぎたので、それぞれ別の記事に書きました。

①シューマッハ・カレッジの体験授業

②サティシュ・クマールのお話

③それを取り囲むプログラム
(今読んでいただいている記事も③のことについて主に書いています)


今回のプログラムのファシリテーターは、芯のある優しさを感じるTillyと賑やかムードメーカーFazeの2人。そして、サポートスタッフのAnne、ボランティアスタッフのMiyuさんでした。

左からTilly, Faze, Anne, Miyuさん

わたしがシューマッハ・カレッジに来た目的は、主に②の「サティシュ・クマールに会うこと」だったのですが、一番意識していなかった③の「プログラムを取り囲む雰囲気づくり」が素敵すぎたので、ぜひ知って欲しいなぁ。

たった5日間だけだったけれど、朝から夜までぎっしりコンテンツが詰まっていて、本当に盛りだくさんのプログラムでした。

▼1週間の滞在スケジュールはこちら

朝から夜までみっちり!!

ここにいるのはどんな人?この場所でどう過ごす?

プログラムはビッグサークルからスタート。まずは、シューマッハ・カレッジの歴史。そして、ファシリテーターと参加者の自己紹介。名前と出身地と自分を表すことば一つをシェアしあいました。


その後は非言語のワーク。滞在中主に使用するこの部屋の中を歩いて、そこにあるものを見たり、歩いたり、伸びをしたりします。プログラムを始めるにあたって「自分という存在をこの環境に慣れさせる」時間なんだそう。

少しするとファシリテーターの合図で足をとめ、目の前にいる人と見つめ合い、言葉を使わずにお互いを知り合うことを促されます。

目の前にいる人は同じようで、違う人間です。
どんな場所に行き、どんなものを見て、どんな人に出会ってきたのか。

どんな感情をその体に秘めているのか。
どのように人生を理解しているのか。

目の前のその存在に込められた、神秘さや素晴らしさや脆さを受け止めてください。すべての神性と人間性を受け止めてみてください。

目の前に立っているのは同じ「人間」ではあるけれど、よく見ればまったく違う「人間」。まずはその物質としてのカタチを見て、次にその人の中身を見つめてみるという、すごく不思議なワークでした。

グローバルなグループで非言語ワークをやるということがとても面白くて、これは現地プログラムならではの体験かも?と思いました。


その後、グループのためのいくつかのルールを確認。ファシリテーターの2人が言っていたのはこんなことでした。

大切なのは、責任を持って自分をケアすること。
ここで起きることはすべてウェルカムです。
違和感のあるところにこそ、大きな成長があるものだから。

プログラムにおいて、注意して欲しいことをいくつか伝えます。
他人の話はここ以外でむやみに共有しないこと。
積極的に相手の話を聞くようにすること。
相手のベストを想像すること。

そして、あなたの快適さを大切にしてください。
好きなものがあれば持ってきたらいいし、何か伝えたいこと、みんなに紹介したいことがあれば言ってください。
ここはわたしたちのスペースであり、あなたのスペースです。

もう一つ大切にしてほしい姿勢があります。
自分のことを外に出すこと、シェアすること。
それは、お互いを知ることにもつながります。
ぜひ、この機会を自分にとって生かしてほしいのです。
なぜなら、たくさんの叡智がここには集まっているから。

とはいえ、プログラムはすべてすべては選択肢でしかありません。
自分で決めて参加すればOKです。
自分のバランスを大切にしてくださいね。

このとき誰かが「re discovery」という言葉を出してくれたんですよね。

日々の生活の中で、自分を失うことってとても簡単なこと。けれど、この場所で、わたしはもう一度自分を再発見したいと思っているの。

自分を探究することって、本当はずっとやり続けないといけないことなんですよ。でもみんな、もっと大切なことは別のことにあるって思っていたり、めんどくさくて後回しにしたりして、置き去りにしてしまっている。

だからこそ、この場所は、ちょっと立ち止まるにはすごくいい環境なんだなって思いました。それこそ人生の寄り道なのかもしれないなって。

大切なことって、「誰かの道」を「まっすぐ」歩いていたら気づけないんですよね。人生の時間には限りがあるからこそ、ちゃんと自分として生きないといけないって思い直しました。

はじめて、生きてきた年数が価値だと思えた瞬間

これは、プログラムの参加にあたって事前にひとつだけ出されていた宿題。「自分を表すものをひとつ持ってくる」というお題です。

The tutors for the course have asked that you bring a special object with you. One that you can share with the group and begin your personal enquiry with.

1日目の夜、その「もの」のストーリーとともにみんなにシェアするワークなんですが、これがめちゃくちゃ感動的でした…。


ファシリテーターのTillyが教えてくれたのは、「大切なものがつくってくれる雰囲気がある」ということ。そしてこれが最終日につながっていきます。

準備ができた人から順番に話してね。
なぜならその方が他の人の話が聞けるから。

シューマッハ・カレッジはダーティントントラストという財団が支えてできたのですが、その由来は「ここがDart(オークの木)がたくさん生えている場所だったから」なんだそう。その夜は雨が降っていたのですが、雨の音がBGMみたいになって、すごくいい雰囲気だったのです。


ぽつりぽつり。一人ずつ色んな物語が話されていきました。

その物語をここでシェアすることはできないけれど、そのときわたしが感じたのは、長く生きている人、困難を乗り越えた人ほど語れるストーリーを多く持っているということ。

それまで、10代20代の人たちもいる環境で過ごしていたから(わたしは30代)、「若いっていいなぁー」って思っていたのですが、このときはじめて生きてきた年数が価値だって思えたのですね。

それぞれの持つ物語や、バックグラウンドが魅力的すぎて、5日間じゃみんなのこと知りきれない!って思いました。


それから、日本人が英語が話せないのは完璧を求めるからだなって改めて。ヨーロッパにいると英語の多様さに驚くばかりだし、英語のリスニング教材みたいに話す人なんてどこにもいないんですよね(あれは主にアメリカ英語ではあるけれど)。

言葉は、時代や場所とともに変化するもの。だからこそ、生きた言葉から学ばないといけないんじゃないかなって。「お手本英語」から抜け出して、実際に話されている言葉に触れないと、日本人は一生英語が喋れないままの気がします。

そしてこのとき思ったのは、「たった3ヶ月だったけど、わたし英語ちょっと話せるようになってる!」ってこと。そしてわたしは語りたい言葉を持っているということ。全部は聞き取れないけれど、もっとみんなを理解したい気持ちも持っているってこと。


色々なパーソナルストーリーを聞いているうちに、「みんなそれぞれ色んな道を葛藤しながら歩いている」ってことに気づき直したし、そういう物語が誰かを勇気づけていくのかもしれないと思えたのです。

わたしも自分の経験を通して、誰かの心を明るくしていけたらいいなって思ったし、その力がもうこの手にあると思えるなら、その力をちゃんと使っていかないとなと思った瞬間でもありました。


続く。


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