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破れた恋は忘れるまで「付き合った3倍の年月」が掛かるのは本当だった話

元々、幼馴染だった彼。
15歳から24歳まで共に生きた。
高校を卒業して、田舎町を捨てる様に始めた暮らしは貧乏だったけど、幸せだった。

学生の彼を卒業させるために、
慣れない土地で私は働いた。

北海道で生まれた彼は3月に咲く
桜に驚き、
本州で生まれたけれど親の都合で
北海道で暮らした私は懐かしさを
感じた。

彼の入学式のあと、
神社から街を見下ろすと桜吹雪が
舞った。
これから始まる“18歳の私達”に
エールを送るような美しい青い空
に舞うピンクは昨日の様に
覚えている。

本州の暑さに慣れない彼は良く
夜中にコンビニまで私の手を
繋いでアイスを買いに行った。
ボロアパートに着くまでに
溶けてしまうから、
夜道を食べながら歩いた。

秋にはスーパーで一緒に買い物を
して、発泡スチロールに入った
秋刀魚を買った。
当時はとても安く、良く食卓に
乗せた。
何日も続いても彼は文句を
言わずに食べてくれた。

バス代がもったいなくて、
手を繋ぎ歩いた晩秋の夜道は
踏まれて潰れた銀杏の香りが
街中に漂っていた。

私が先に帰って夕ご飯の支度を
していると、
玄関を開けた彼は冬の匂いを
連れて帰って来た。

料理中の私に頬をくっつけて、
「寒かったよーただいま。」と
甘えた。
抱きしめる手はつめたく、
かじかんでいた。

次の日に毛糸を購入して、
手袋とマフラーを編んだ。
彼はそれをつけて、
翌日から登校した。

私の手は手荒れがひどかったけど
彼が喜ぶ全てが嬉しかった。

19歳の誕生日。
何もないけど、夜中に私が寝返り
をしようとすると眠っているはずの
彼が強く私を引き寄せて、
苦しい程抱き寄せた。

「どこにも行くな。」

彼の頬には涙が流れていた。

彼の生い立ちも、
私の生い立ちも、
全く誰にも頼れない子供時代だった

大きな街で沢山人はいるのに
私たちは“ 2人きり ”だった。

6歳で出会い、
15歳で恋に落ち、
18歳から23歳まで共に暮らした。

絶対に誰から見ても別れるはずの
ない私達は…23歳で別れた。
8年間付き合い、
区切りがお互いにつくまで24年。
本気の恋は忘れるまでに
付き合った3倍の年月が掛かるのは
本当だと実感している。

互いに他の人と結婚しても
離婚しても、
忘れられなかった。

どこかに罪悪感を残しながら
生きて来た。
きっと、これからも彼以上に
私を愛し、私もまた泣き叫びたくなるほど感情が揺さぶられる人には
出会わないだろう。

ただ何の条件もなく…愛していた。

そんな誰も知らない
宝箱の中の宝石みたいな恋でさえ、
ちゃんと終わりが来た。
別れて24年。

別々の道を辿り、
再会する事はないけれど、
いつでも連絡は取れる。

彼の体調が悪い時は
なぜか私も同じく体調を崩している
…言葉に言い表せない不思議さ。


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