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洋梨の話 サティ&ドビュッシー

みなさんはフルーツは何が好きでしょうか?
私は洋梨が大好物。芳醇な香りと歯触りがたまらなく好きです。
2024年は豊作だったようで、年明けお正月を過ぎても食べてます😊
今日は、そんな洋梨のおはなしです。

洋梨のお菓子 『ベラベッカ』

フランスの洋梨のお菓子『ベラベッカ』もお正月にいただきました。
とても美味しかった!

見た目はフルーツたっぷりでワイルドなお菓子『ベラベッカ』
中もドライフルーツやナッツがぎっしりで、甘さは控えめです

『ベラベッカ』は、フランス北東部のアルザス地方の代表的なお菓子とされており、クリスマスの時季に食べられます。洋ナシの他、レーズン、イチジク、プルーンなどのドライフルーツや、アーモンド、ピスタチオなどのナッツが沢山が入っていて、スパイスの香りもよいです。かつては「新年のパン」「年賀のパン」として、新年の挨拶代わりに手土産として持っていく風習もあったそうです。アルザス地方は、ドイツとフランスに代わる代わる統治されてきた歴史があるため、ドイツのシュトーレンと共通点も多いのですが、ベラベッカの方が甘くなく、スパイシーで好みです。


洋梨の曲 『梨の形をした3つの小品』

さて、洋梨といえば、フランスの作曲家エリック・サティの『梨の形をした3つの小品』(1903年)という曲があります。(「3つの小品」とありますが、実際には7つの小曲からできています。)

サティは「音楽界の異端児」「音楽界の変わり者」の異名で知られていますが、曲のタイトルもとても変わっています。例えば、『乾からびた胎児』『犬のためのぶよぶよした前奏曲』『いつも片目を開けて眠るよく肥った猿の王様を目覚めさせる為のファンファーレ』など、なぜこんな名前なのか?と首をかしげてしまいそう。笑

『梨の形をした3つの小品』という曲には、こんなエピソードがありました。

ある日、サティの友人であるドビュッシーから
「あなたの曲には形式というものが欠けているよ」と忠告され、サティは『梨の形をした3つの小品』と名づけて、調性、拍子、形式を明確にした曲を作曲しました。

なぜ「梨」?

フランス語で「梨」というと「まぬけ」を表す隠語だそうで、形式を大事に思っていなかったサティは、形式に対する皮肉として名付けたのだとか。
サティらしい、エスプリの効いた回答だったのですね。

そんなサティとドビュッシーは、喧嘩しつつも約30年もの間、友達だったそう。サティは初めてドビュッシー(4つ年上の29歳)と会った時、以前からお互いのことをよく知っているかのようだったと語っています。貧乏だったサティはピアノを持っておらず、週に1〜3回はドビュッシーの家に遊びに行き、ピアノを弾かせてもらい、彼の作る美味しい手料理をいただいていました。魚釣りやパーティーにもよく二人で行っていたそうです。ストラヴィンスキーにサティの曲を何度も聴かせて紹介したのもドビュッシーです。



コクトーが企画したバレエ『パラード』の成功によって、ピカソ(衣装・舞台装置)やディアギレフ(ロシアバレエ団)とともにサティ(音楽)は時代の先駆者として認められます。しかし、その頃にはサティとドビュッシーの二人は会わなくなってしまいました。大腸がんを患い、最も体調が悪い頃でもあったドビュッシーは、なぜサティが注目を集めているのかが理解しづらかったようなのですが、そのことを知ったサティは傷つき、ドビュッシーに手紙を書いて絶交してしまうのでした。

約300年続いた西洋音楽の伝統である調性音楽を破壊し、無調と呼ばれる音楽の先駆けとなったサティは、その後、フランスの芸術家たちの中心的な存在の一人となっていきました。バレエ『パラード』は、今見ても面白いですね。


おまけ: 洋梨のピアス オートクチュール刺繍

サティの『梨の形をした3つの小品』を聴いて、洋梨をモチーフとしたピアスをフランスのオートクチュール刺繍の技法で作ってみました。ヴィンテージのビーズを使い、左右それぞれを異なるデザインにして、遊び心のあるアクセサリーに仕上げました。
これからも時々、音楽にちなんだ刺繍作品をご紹介できたらと思っています。


記念すべき100本目の投稿でした。

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