見出し画像

#63 ザ・ローリング・ストーンズ『ハックニー・ダイアモンズ』

服部さんへ

 まずはオリヴィア・ロドリゴの続きです。日本の音楽番組でのインタビューを見たら、とても快活でフレンドリーで、予想は思い切りハズレでした。まあ、テレビ、ですけどね。
 さて本題です。実は僕、「〜を首席で卒業」というフレーズに妙に抵抗を感じてしまう性分でして……。コンプレックス以外の何ものでもなく、恥じてはいるものの、どうしても、行儀がいい音だなとか、毒も棘もないとか、何かと難癖をつけたがるところがあるんです。しかも、この手のクラシック音楽に毒だの棘だのって、何よ? っていう話なんですけど。
 でも、陰はほしいんだよな〜、などと思いながら聴いていたら、ありました、陰。っていうか、この少年のような青年、感情を非常に豊かに表現する人ですね。テクニックだけでは、こうはならない気がするし、オリヴィア・ロゴリゴしかり、若者をナメてはいけないと痛感させられました。

ザ・ローリング・ストーンズ『ハックニー・ダイアモンズ』
 来た〜っ! オリジナルとしては『ア・ビガー・バン』以来、実に18年ぶりとなるニュー・アルバム。リード・シングル「アングリー」が、早々に日本のTVドラマの主題歌に起用されているのも、うれしい。

 いやしかし、なんなんだ、このフレッシュ感は。「アングリー」のMVに若かりし日のメンバーの映像が使われていて、なんだかなあと思っていたのだが(めちゃくちゃカッコいいけどね)、とにかく音が、ビートが、グルーヴが、キレッキレのキラッキラ。過去にも、時代を読んでパンクやディスコに大胆に舵を切ったことがあるが、今回はバンドの2020年代のモードを全面に打ち出している。
 ストーンズの最新モードとはズバリ、“ポップ”だ。このあたりはジャスティン・ビーバー、エド・シーランからポスト・マローン、デュア・リパまでを手がけているアンドリュー・ワットの貢献も大きいのだろうが、孫ほども年の差のあるプロデューサーを、ためらうことなく起用するあたり、さすがはストーンズだ。
 しかも、フォークあり、ブルースあり、スワンプ・ロックありと多彩なサウンドを聴かせつつ、どの曲もメロディの美しさ、キャッチーさが驚異的。2曲でチャーリー・ワッツのドラムが聴けるうえに、そのうちの1曲「リヴ・バイ・ザ・ソード」にはビル・ワイマンが参加というのも泣けるし、ポール・マッカートニーにエルトン・ジョン、スティーヴィー・ワンダー、レディー・ガガと名を連ねたゲストのパフォーマンスも秀逸だ。
 控えめに言っても、傑作。名盤。マジで、ガチで、本当に、文字通り、死ぬまでついていきます。
                              鈴木宏和


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?