見出し画像

#124 希望的予測グラミー賞の行方

鈴木さんへ

 キュアーって16年ぶりの新作なんですよね。90年代初頭にLAに出張した時、入る店入る店で彼らのMV流れていたのをよく覚えています。そんな記憶が懐かしい彼らの新作は、3分以下の短い曲が主流の時代に逆行するかのように6分以上の曲から始まり、最後は10分超え! 65歳、やりますね。妖しい雰囲気に飲まれないようにと聴きました。
 ところで、話は変わりますが、ボブ・ディランの伝記映画『名もなき者』を試写で観ました。デビュー前後の若き日を描いた作品で、ボブ・ディランはもとよりピート・シーガーやジョーン・バエズらとの人間関係、さらに音楽と社会との関係性にあの時代の風を感じられて、随所で胸が熱くなりました。観た後で、思わず古本屋でジョーン・バエズの自伝を入手しました。
 このnoteも2024年最後です。TOP5企画を経たあと、何にすべきか迷うなか、勝手にグラミー賞主要部門の行方を予想することにしました。とは言え、昔々FM FANという雑誌でグラミー賞特集を毎年手掛けるなかで、実は予想が当たったことはなく、なので、かなり希望を含む予想になりますし、なんか混戦模様という感じはしますが……。鈴木さんの予想も気になります。

【最優秀レコード賞】
ビヨンセ『TEXAS HOLD "EM"』
【最優秀アルバム賞】
ビヨンセ『COWBOY CARTER』
【最優秀楽曲賞】
シャブージー『A Bar Song (Tipsy)』
【最優秀新人賞】
Raye

Raye

 なんか、並べてみると、平凡かな。でも、ビヨンセに関しては、そろそろ主要部門で獲らせてあげて、という願望がとっても含まれています。デスチャ時代に何度もインタビューしましたが、彼女達のアルバム制作、そのプロモーションへの涙ぐましいほどの努力に刺激を受けていました。どうしてそんなに頑張れるの?なんて質問したこともあったくらいに。そんな経緯もあるし、でも、それ以上にカントリー・ミュージックについてものすごく研究した痕跡が感じられたことも評価ポイントです。バックヴォーカルに迎えたゲストなど、こんなにもカントリー・ミュージックを演っている黒人アーティストがいるのかと驚かされました。
 これも音楽と社会に関わることですが、分断が煽られる時代に音楽でこういうことが出来ると示した作品でもあると思います。作品が出た時にまた”文化を盗んだ”うんぬんという批評もありましたが、いつまでそんなことを口にするんでしょうかね。刺激しあって、化学反応を起こして、いい作品が生まれれば、いいじゃないですか。
 最優秀楽曲賞は、迷いました。レディ・ガガとブルーノ・マーズのレコーディングエピソードが好きだったし、チャペル・ローアンの歌詞に今の時代が感じられるし、でも、シングルチャートで記録を作る大ヒットになったシャブージーに1票を投じることにしました。初めて知った時、ルックスと音楽のギャップにいい混乱があって、それから純粋に曲を楽しませてもらいましたので。
 最後に新人賞は、レイです。UK出身の彼女は、最優秀ソングライター賞の候補にもなっていて、冒頭のビヨンセにも楽曲を提供したことも。そんな彼女の1stアルバム『My 21st Century Blues』では挫折やコンプレックスなどから生まれたさまざまな感情が歌われていて、痛々しいところもありつつ、共感で救われるリスナーもいるだろうと……。レイもチャペル・ローアンも若くして契約したメジャーレーベルから切られたことがひとつのターニングポイントになったようです。そこも応援したいポイント(元レコード会社の社員なので)。
↓ 最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞をまとめたプレイリスト

 それからそれから、主要4部門全体を見ると、女性パワー、ロック不遇が如実に表れていますよね。最優秀レコード賞もアルバム賞も、8候補のうち6候補が女性です。そのなかで、異色の存在が最優秀アルバム賞のアンドレ3000。ラッパーの彼が作った「本当はラップアルバムを作りたかった」うんぬんという長ったらしいタイトルの曲から始まるインストゥルメンタルアルバム『New Blue Sun』で、彼は民族楽器などフルートを演奏している。アトランタからLAに移住して出会った仙人のような風貌のカルロス・ニーニョの影響で、ジャズやニューエイジの世界に沼ったらしいです。その作品が最優秀アルバム賞にノミネートされたことは、まさに異色。な~んか意図を感じます。
                            服部のり子

いいなと思ったら応援しよう!