#124 希望的予測グラミー賞の行方
【最優秀レコード賞】
ビヨンセ『TEXAS HOLD "EM"』
【最優秀アルバム賞】
ビヨンセ『COWBOY CARTER』
【最優秀楽曲賞】
シャブージー『A Bar Song (Tipsy)』
【最優秀新人賞】
Raye
なんか、並べてみると、平凡かな。でも、ビヨンセに関しては、そろそろ主要部門で獲らせてあげて、という願望がとっても含まれています。デスチャ時代に何度もインタビューしましたが、彼女達のアルバム制作、そのプロモーションへの涙ぐましいほどの努力に刺激を受けていました。どうしてそんなに頑張れるの?なんて質問したこともあったくらいに。そんな経緯もあるし、でも、それ以上にカントリー・ミュージックについてものすごく研究した痕跡が感じられたことも評価ポイントです。バックヴォーカルに迎えたゲストなど、こんなにもカントリー・ミュージックを演っている黒人アーティストがいるのかと驚かされました。
これも音楽と社会に関わることですが、分断が煽られる時代に音楽でこういうことが出来ると示した作品でもあると思います。作品が出た時にまた”文化を盗んだ”うんぬんという批評もありましたが、いつまでそんなことを口にするんでしょうかね。刺激しあって、化学反応を起こして、いい作品が生まれれば、いいじゃないですか。
最優秀楽曲賞は、迷いました。レディ・ガガとブルーノ・マーズのレコーディングエピソードが好きだったし、チャペル・ローアンの歌詞に今の時代が感じられるし、でも、シングルチャートで記録を作る大ヒットになったシャブージーに1票を投じることにしました。初めて知った時、ルックスと音楽のギャップにいい混乱があって、それから純粋に曲を楽しませてもらいましたので。
最後に新人賞は、レイです。UK出身の彼女は、最優秀ソングライター賞の候補にもなっていて、冒頭のビヨンセにも楽曲を提供したことも。そんな彼女の1stアルバム『My 21st Century Blues』では挫折やコンプレックスなどから生まれたさまざまな感情が歌われていて、痛々しいところもありつつ、共感で救われるリスナーもいるだろうと……。レイもチャペル・ローアンも若くして契約したメジャーレーベルから切られたことがひとつのターニングポイントになったようです。そこも応援したいポイント(元レコード会社の社員なので)。
↓ 最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞をまとめたプレイリスト
それからそれから、主要4部門全体を見ると、女性パワー、ロック不遇が如実に表れていますよね。最優秀レコード賞もアルバム賞も、8候補のうち6候補が女性です。そのなかで、異色の存在が最優秀アルバム賞のアンドレ3000。ラッパーの彼が作った「本当はラップアルバムを作りたかった」うんぬんという長ったらしいタイトルの曲から始まるインストゥルメンタルアルバム『New Blue Sun』で、彼は民族楽器などフルートを演奏している。アトランタからLAに移住して出会った仙人のような風貌のカルロス・ニーニョの影響で、ジャズやニューエイジの世界に沼ったらしいです。その作品が最優秀アルバム賞にノミネートされたことは、まさに異色。な~んか意図を感じます。
服部のり子