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#99 ボン・ジョヴィ『フォーエヴァー』

服部さんへ

 リアナ・フローレスの新作紹介、ありがとうございます。お初でしたが、季節的にもいいタイミングで、いい出会いでございました。とても好きです。それこそ、ジャケットも最高ですね。
 もともと僕の耳や頭(心?)は、なぜかブラジル音楽が(ポルトガル語も)心地よく感じられるようにできているようで、彼女は英語で歌っているけど、ブラジル音楽特有のヴァイブスみたいなものが全身から(見えちゃいませんが)あふれていますね。優しくシルキーだけど、決してヤワじゃないヴォーカルも魅力的で、気づけばちょっとした仕事をしながらループ聴きしておりました。
 正直僕は、歌詞の内容は二の次タイプの洋楽リスナーなのですが、このリリカルな歌世界で、彼女がどのような心情や風景を伝えているのか、知りたくもなりました。
 さて、今回僕が取り上げるのは、そんなアルバム・タイトルやめてよ〜のボン・ジョヴィの新作です。

ボン・ジョヴィ『フォーエヴァー』

 そう、だってタイトルがこれなんだもの。
  僕は編集者時代を含めると、四半世紀以上、洋楽に近い業界に身を置いてきたことになるのだけど、ボン・ジョヴィを好きと声高に言うことが、なんとなくはばかられるような空気をずっと感じていた。僕は、好きですよ。
 まだ50手前のジョン・ボン・ジョヴィにインタヴューした時、「今後のキャリアの展望というより、そろそろキャリアをどう終えるかを考えていかないといけない」と言っていて、その言葉がずっと頭に残っていた。ジョンの還暦到達後初、『夜明けのランナウェイ』でのデビューから40周年というアニヴァーサリー・イヤーに、4年ぶりに世に送り出されたのが、これだ。
 まずは、リード曲の「レジェンダリー」を、ボン・ジョヴィの全キャリアを代表すると言っても過言ではない名アンセムに仕上げてくるあたりが、まさにジョンの真骨頂であり、このソングライティングの才こそ、長く愛されてきた理由だと思う。

 そして、その名も「リヴィング・プルーフ」。これも取り上げないわけにはいくまい。誰もが知る「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」へのセルフ・オマージュというか、遊びというかパロディというか、大人の余裕を感じさせて微笑ましい。

 “リヴィング”つながりの「リヴィング・イン・パラダイス」(エド・シーラントの共作!)も、「レジェンダリー」に劣らぬ素晴らしいアンセムだし、一転して「アイ・ロウト・ユー・ア・ソング」「マイ・ファースト・ギター」などは、ここまで内省的なバラードがあったかというほど、切なくもあり、ノスタルジックでもあり。

 何かを悟ったのか、決意したのか、とても肩の力が抜けていて、自身のキャリアを噛みしめるように、抱きしめるように、ロックを愛でているジョンの姿が浮かんでくるのは、僕だけではないと思う。でも、だけど、『永遠』という言葉の本来の意味通り、ボン・ジョヴィはまだまだ続くと考えることにしよう。
                              鈴木宏和


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