#80 ジェイソン・デルーロ『Nu King』
ジェイソン・デルーロ『Nu King』
9年ぶりとなる新作を知るきっかけは、前述したようにマイケル・ブーブレとの『Spicy Margarita』だった。いきなりマイケルの人気楽曲『Sway』から曲が始まって、ジェイソンの歌もラテン調と洒脱で、しかもタイトルが『スパイシー・マルガリータ』なんて。2人には”ポップ”という共通点はあるものの、ジャズとR&Bの融合は意外にも難しいと言い、彼らも当初は、苦戦したそうだ。
でも、そんなことを一切感じさせないカッコいいパフォーマンス。ジェイソンの新作『Nu King』には27曲も収録されているんだけれど、そのうち14曲がゲストあり。ニッキー・ミナージュらヒップホップ系も大勢いるけれど、それ以外の異ジャンルのゲストがおもしろく、たとえば、『When Love Sucks』ではダイドのヒット曲『サンキュー』がフィーチャーされているし、『Hands on Me』では名曲『スタンド・バイ・ミー』を引用しながら、メーガン・トレイナーと共演していたり。この曲がまた楽しくて、気持ちが上がるのだ。
収録曲のなかには彼が得意とするレゲトンもあるけれど、コラボ曲では自分にはない色を取り込もうとしてか、相手の音楽を尊重しているように思う。それが多彩さを生み、27曲あっても飽きない要因になっているのでは。
よくアーティストがスタジオでの予期せぬ「化学反応」のおもしろさを口にするけれど、それが作品にもたらす効果と、これからの音楽の未来予想図を感じさせるアルバム。そういえば、ビヨンセの新作もカントリーがテーマだという。2024年は、異種融合がトレンドになるのかもしれない。
服部のり子