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残高照会怖すぎて無理、とルイス・コールは言った

久しぶりに殺人の夢を見た。とはいえ、この手の夢で決定的瞬間を演じたことは一度もない。どうも誰かを手に掛けてしまったらしいと事後的に事態を飲み込むパターンばかりだ。相手も誰なのかはっきりしない。今回の夢は、殺人がまだ露見しておらず、周囲の人に悟られぬように平静を装うという内容だった。

こうした夢から目覚めるたびに深い安堵を覚える。「取り返しのつかないことをしてしまった」という後悔と「一体どんな罰が待ち受けているのか」という心配から一挙に解放されるからだ。後悔と心配は我々人間の心を蝕み続けるネガティブな感情の二大巨頭である。このふたつが同時に襲いかかってくるのが殺人の夢だ。

後悔と心配はそれぞれ過去と未来に対応していて、どちらも我々のコントロール外にある。だから、くよくよ考えたところでどうにもならない。我々にできるのは、せいぜい意識のフォーカスを現在に合わせ、今この瞬間に考えうる最善策を実行に移すことぐらいである。こう言うのは、古代ギリシアのストア派だ。2000年以上も前に対処法の決定打が出ているにもかかわらず、今日も我々人間は後悔と心配に苛まれ、くよくよしながら暮らしている。

過去に犯した罪への贖いを軽視した結果、リボ払いのように負債がかさみ、想像もつかないような罰をそう遠くない未来に受ける羽目になるのではないかといった不安にしばしば襲われる。私はこれを「リボ払い的不安」と呼んでいる。これは後悔と心配というふたつの感情に前後から挟み撃ちされることから生じる不安だと言って良い。

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日記と夢日記

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