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東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイ

ヤクルトが勝った日も、負けた日も、打った日も、打たれた日も、ノーノーの日も、(ほぼ)毎試合、観戦エッセイをアップします。勝った日は喜びを倍にし、負けた日は悲しみを半分…いや8割……
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2021年11月の記事一覧

【11/27日本シリーズ オリックス戦◎】ヤクルト日本一の日に。てっぱちの涙、息子の涙。

てっぱちの涙を、村上くんの涙を、青木の涙を、カツオさんの涙を、慎吾の涙を、私は忘れないでいようと思う。みんながどれほどの思いを持って、このシーズンを戦ったのか、そして、日本シリーズの熱戦を戦い続けたのか。私がわかったふりをしながら、全然わかっていなかった、たくさんのことを。 ♢ オリンピックでてっぱちと村上くんがほんとうに嬉しそうな顔で笑っていた時、私はてっぱちのこんな笑顔を見たことがないな、と、そうおもった。 てっぱちの喜びがたくさん伝わってきた。それを見ながら私は、

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【11/25日本シリーズ オリックス戦●】ほんとうに幸せな時間は、振り返ったときにあとからわかるもの

スーツの上からオリックスのユニフォームを着たお兄さんが、熱心にグラウンドを眺めていた。 先発の山﨑が三振を奪うたび、静かな、でも気持ちのこもった拍手を送り、攻撃の時には応援団の太鼓のリズムに合わせて手を叩く。 横顔が宮本くんに似てるな…とか思っていたら、立ち上がった姿を見て驚いた、それは「お兄さん」じゃなくて、学生さんだった。スーツだと思ったのは、制服だったのだ。 学生さんは、オリックス側に積み重なっていく点数を見ながら、ほんとうにうれしそうに手を叩いた。素直な喜びが、

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【11/24日本シリーズ オリックス戦◯】カツオさんはヒロインでいつも、誰かに感謝する

カツオさんはお立ち台で、「めちゃくちゃうれしいです」と言ってはにかんだ。それはほんとうに、ほんとうに嬉しそうな笑顔だった。 私は今シーズン、何度も何度も見たカツオさんの悔しそうな顔を思い出し、思わず泣いた。優しいフォロワーさんがくれた「塩入りタブレット」を取り出し、口に入れる。 やさしさの味がして、私はまた、泣く。 「第4戦という大事な試合を任されて、なんとか監督の気持ちにこたえたかったので、『絶対大丈夫』という気持ちでマウンドに立ちました。」と、カツオさんは言う。

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【11/23日本シリーズ オリックス戦◯】「気持ち」が突き動かすもの

「気持ちで打ちました」「気持ちで投げました」といったようなことを聞くたびに、…気持ちでなんとかなるなら苦労しないけれども!と、思っていた。だけどこの日本シリーズの試合を見ながら私は「ああこれは、気持ちだわ…」と、つくづく思う。 例えば青木のヒット1本に、その「気持ち」を見る。 今シーズン、青木は数字としては「ものすごく良い」ものではない成績だった、と思う。いや十分すごいけれど、今までと比べれば飛び抜けて良いものだったわけではない。だけどこの日本シリーズで、青木はほんとうに

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【11/21日本シリーズ オリックス戦◯】長い長いその物語の、一日の断片を見られる幸せを

久々に、正座をしてテレビの画面を見つめた。6回表、そこまでパーフェクトに抑えられていた宮城相手に、なおみちはチーム初ヒットを放った。そして続くぐっちは、粘った末に8球目でヒットを打った。 それは、とてもとてもぐっちらしい、私が神宮で何度も何度も見てきた、きれいなヒットだった。 ♢ 京セラでのスタメン発表時、オリックスファンからも大きな拍手が上がりましたよ、と、現地にいるフォロワーさんが教えてくれた。ヤクルトファンではないフォロワーさんなのに、写真もたくさん送ってくれた。

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【11/20日本シリーズ オリックス戦●】優しいマクガフの、力強い貢献があったから

こちらの記事トップと、記事内のお写真は、Motoyama Yuki @motolevel さんにいただきました!ありがとうございます! 「悔しいですが、選手みんながこの大舞台で全力プレーできている姿が観られて嬉しくて、現地観戦って改めて良いですね」 とおっしゃっていて、ああそうだ、ほんとうにそうだな、と思いました。この時期に野球を楽しめること、それはほんとうにしあわせなことなんですよね。 「さ、酸素が足りない…」と、フラフラになりながら私は、リビングの窓を少し開けた。「空気

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【11/12 CS巨人戦◯】ピンチを何度も乗り切ってきたのが、今年のヤクルトだったから

手術明けの子ねこを迎えに少し離れた動物病院へいき、てくてく歩いて帰っていたら、試合は始まっていた。 いや、試合は始まっていたどころか、家についたらピッチャーは、じゅりから金久保くんに代わっていた。 え!!!!!じゅりは!!!!!と、言いながら慌ててテレビをつける。なんといっても珍しく、地上波の放送があったのだ。画面の向こうでは金久保くんが、とても緊張した面持ちでボールを投げていた。 そのタイミングで来た仕事のLINEに「じゅり…」と、返信する。もはやなんのことかわからな

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【11/11CS巨人戦◯】きっと、ここからだってまた物語は始まり、続いていく。

とにかく、CSの初戦前から、「今年は冷静にいくぞ、そわそわしないぞ…」と、自分に言い聞かせていた。 それもこれも、あの3年前のCSがトラウマになっているからだ。あの日、やたらと緊張しながら向かった神宮で私が見たのは、スガノーノーだった。 仕方がないのでここでその日のnoteを振り返ってみたい。 悔しい思いはただ募る。消化できない思いをぶつける試合は、明日も明後日もやってこない。シーズン中は、明日は明日の風が吹くと切り替えてきたけれど、その「明日」はもう随分と先までやって

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【11/10CS巨人戦◯】奥川くんのそれは、「奇跡」じゃなくて

奇跡なんてそんなに、起こるものじゃない。 ドラマみたいな筋書きが、現実に用意されているわけじゃない。 ここで打って欲しい、というときに、凡退することは山のようにある。 ここを押さえてくれれば、という祈りはなかなか、届かない。 エースと呼ばれる誰かが、いつだって素晴らしい投球を見せるわけではない。 それでも時に、現実は想像した以上の物語を用意している。 ♢ うそみたい。と、私は思う。 一年前ここで、めちゃくちゃに打たれまくったルーキーが、たった一年で、CSの初戦

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野球が好きな雄平が、大好きだ。【11/1広島戦●】

「センター塩見に代わりまして、ライト、雄平」のコールが流れると、直前に花束を受け取っていた雄平は、花束をグローブに持ち替え、にこにことうれしそうに笑いながら、ライトの守備位置に向かって駆け出していった。 直後、球場には「長岡に代わりまして、ピッチャー、石川」のコールが響いた。ブルペンで投げていたカツオさんはお水を飲み、ライトの守備につく雄平と、遠くからグータッチを交わした。 試合の途中で引退セレモニーやっちゃうのか、優勝セレモニーがあるからかなあ、と、少しさみしく思ってし

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【10/29広島戦●】負けることから、学ぶこと。

外出先から帰ってきたら、サッカーの大会で遅くなるはずだった息子が、先に帰ってきていた。 「あれ!ごめん、早かったね!まだ帰ってこないかと思ってた!」と、言うと、「うん、一回戦で負けちゃってさ、すぐ帰ってきたの」と、しょぼん、としながら息子が言った。 「そっかそっか!また次がんばればいいよ!ごはんすぐ準備するね!」と、軽く話す私に、息子は続けた。 「去年は2位だったから、今年シード権あったの。けど、なんかチャンスで点取れなくて、何回もそうやってるうちに、ミスから向こうに1

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