地球と私に突き刺さる
私は、人が多いところが苦手だ。
だから観光地や映えスポットみたいなところには近づかないし
もちろん旅行にもあまり行かない。
子どもの頃、家族で行った沖縄旅行。
楽しみにしていた美ら海水族館のジンベエザメの水槽の前を
写真を撮るために長時間占領し続ける団体客を見て
怒りよりも、悲しい気持ちがこみ上げた苦い記憶が
いつまでも頭にこびり付いているからである。
そんなことで?と思うかもしれないが
何かを嫌いになるきっかけなんてそんなものである。
そんな私が旅の本で心を射止められるなんて青天の霹靂である。
kozee著『SASARU 地球の刺さり方』
世界各地の地面に3年間刺さり続けた男の物語である。
写真集的な感じで
写真にエスプリの効いた一文と
大まかな地域ごとのエピソードが載せられている。
☑この本の素晴らしいところ
こんなに奇妙なポーズをしているのに
まったく違和感を感じさせないというところである。
不思議なことに
集合写真でクラスのお調子者がはしゃいでいるような
身内以外から見ればイタい感覚を全く感じさせないのである。
表紙にあるような人工物がない場所なら
大自然の迫力が凌駕して気にならないだけかもしれないが
ヨーロッパなどの観光客が大勢いるような場所でも
自然な被写体として映っているのである。
スポットによっては、もともとそこに突き刺さっていたかのような
一体感を感じることができた。
言葉で説明するのは難しいが
日本人の奥ゆかしさみたいなものが
写真から漂ってくるのである。
☑刺さった理由はあとがきにあった
【海外に出たら、自分が日本代表!】
著者があとがきで語っている旅の信念である。
海外で出会う人々が自分を見たときに日本人をどう思うのか?
自問自答しながら3年間、旅をつづけた信念が
この本に宿っているように感じた。
もっとわがままを言えば、もっと無茶をすれば
いい写真を撮れる機会がきっとたくさんあったと思う。
そこから一歩引いた謙虚さが私の心に刺さったのだと思う。
おわりに
あの日、ジンベエザメの前から一歩も引かなかった団体客よ
この本に免じて全てを許そう。
しょうもない思い出を一歩下がって
俯瞰で見れるようになったのだから。
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