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虫好きに悪い人はいない…?

【昆虫エッセイ】
蟻以外に出会うことなく半ば捻くれた気持ちで河川敷をブラブラしていたこの日の午後。

平日の午後ということもあり、私以外誰もいない貸し切り状態でしたが、30メートルほど先のガード下で、一心不乱に虫網を振ってる男性が目に入りました。

とにかく振ってます。
上から振り下ろしたり、横からすくい上げたり。

『お!なんか飛んでる系の虫でもいるのかしら?』と、彼を意識しながらも、『いいの、私は私の虫を探すの!』と茂みに目を凝らしたり、『ここまで来たら、ハムシの一匹くらい…!』と柳の葉一枚一枚を凝視したりしていました。

しかし、意地を張っても収穫はゼロ。

今日はだめか…と諦めかけましたが、どうしても彼が捕まえようとしている『なにか』が気になってしまい、そのまま帰るという気持ちにはなれませんでした。

私も見たい。
飛び系の何か、私も見たい。

決心しました。

『よし、突撃しよう。虫好きは、虫と虫好きには優しいはずだ。』

👩『こんにちは!なにか、虫いるんですか?私も虫探してるんです!😊😊😊』


このセリフを喉の奥に忍ばせ、いい人顔を従えて近づきました。
途中、あることが頭に浮かびました。

『…すっかり忘れてたけど、今日の服めっちゃダサかったんだった。』

そうというのも、出かける前に頭にあったのは
『散策には長袖!白い服!熊対策!蜂対策!』
ということだけで、デザイン性ということに関しては完全に手抜き怠慢ほったらかしになっていたのです。

その結果が、こちら。

ダッサー!!!

『いいの、河原を歩くだけで人に会うこと想定してないから。』

と、それまで草むらをずんずん歩いてきたわけですが、ここに来て20代と思われる男性に話かけることになってしまいました。

さて、もうここまで来たら行くしかない。
彼の方に向かって歩いていく私。

残り十数メートルのところで、流石に彼も私の気配を感じて止まりました。

目が合いました。

私の目は彼の持っている《虫網》…に釘付けになりました。

………虫網じゃない…!!!

む・し・あ・み・じゃ・ない!!!


彼が持っていたのは、ラクロスのラケット

👩『なにか虫でもいるんですか?』 

危うく口から飛び出すところだった言葉を慌てて飲み込み、軽く笑みを浮かべ、このダサスウェットを見せてたまるか!と、もともとの猫背をさらに丸め、ごく自然な足取りで通り過ぎることに成功しました。

絶対バレてない。
大丈夫なはず。

あなたの大切なラケットを虫網だと思ってた、なんて気づいてもいないはず。

危うく人気のない河原で、変な服着たおばさんがニヤニヤしながら『虫…虫…ここに虫はおらんかえ』と鼻息荒く近づいていく、という最悪最恐の状況を作り出すところでした。

ラクロスのお兄さん、ごめんなさい。
虫を探しているのは私だけでした。

そんな昨日の帰り道に唯一出会った虫が彼。
ホソヒラタアブ!

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