2012年 スーパー歌舞伎ヤマトタケル 3
12年の時を経て。。
新橋演舞場「ヤマトタケル」が初日を迎えました。
おめでとうございます。
応援の気持ちをこめて12年前に四代目猿之助襲名披露公演を観た当時の感想をアップしています。
今回は、サプライスでカーテンコールに猿翁さんが登場した話、猿之助さんが襲名に際して言っていた話について書いています。
6月19日 「ヤマトタケル」スペクタクル編
今日は完全オフでした。ということで新橋演舞場「ヤマトタケル」の当日券にチャレンジ。
ラッキーにも入ることができましたが、こんなに理性を失い頑張ったのは歌舞伎を初めて拝見して以来。ついつい壮大な気分になっています。
お芝居は進化していましたっ!私も含めお客のテンションが高く、猿之助さんのテンションもアップ!
前回拝見した時よりもノリノリなのがわかりました。表情が豊かになっていて、いつものあの’眉’の動きが各所に。
目力が凄かったです。すごい迫力。感情をストレートに表現していてバンバン心に響きます。タケルの生まれ変わりなのではないかと想ってしまうほど。
火攻めの後に、敵に責め立てられ刀を向けるのを躊躇するところ、人はいつか灰となる運命。。嘆くシーンはやり切れない悲しさが痛いほど伝わってきました。
そして大和に帰れない悲しみが会場内を包み、死んでしまうシーンは前回より辛さが心に刺さりました。もうそこから涙が止まらなくなってしまい、その後の笑也さん、右近さん(現 右團次さん)、弘太郎さん、團子ちゃんの場面も皆さんの熱い想いに涙涙。。
タケルの戦いは無駄ではなく、こうしてみんなの心の中で生き繋がっていく。彌十郎さん、猿弥さん、門之助さん、、適役の皆様もノリノリで豪快。特に彌十郎さんは惚れました。
カーテンコールは元々一回あるのですが、今日は拍手が鳴りやまずもう一回。
すると猿翁さんがいらっしゃるではないですか!スタンディングの割れんばかりの拍手に精一杯で答えていました。猿之助さんも猿翁さんの手を取り、素顔の笑顔。このお顔が見たかった。泣けました。
改めてお芝居のスケールの大きさと自由さに感動です。特筆すべきは’附けの音’タケルと一体になり、猿之助さんの体から聞こえるのではないかと思うほど。
附け打ちの長坂さんの正確できっぱりとした音は、このスーパー歌舞伎でしか堪能できないのではでしょうか。
スーパー歌舞伎は見得が面白いです。いつもの歌舞伎の見得のラスト一打がほぼ無いではないですか。その分、一打でぴったりと演者と揃えなければならないからタイミングが難しいと思う。
テンポが早いので、止めるタイミングを逃すことはないのかな。音楽は下座音楽と録音のBGMと両方を使い、パーカッションや鈴の音、三味線が匠で空間の広がりを感じました。
大道具、小道具も楽しかったです。熊襲の新宮の屋台崩しは圧巻です。走り水の海のシーンも歌舞伎ならでは。春猿さんが沈んでいく様子もさすがでした。
そして、焼津の火攻めは盛り上がりました!中国の本場の方がご出演なさっているのですが、そのアクロバティックな技の連続に歓声とともに拍手の嵐です。
右近さんの大旗を振る技も凄かった!いろいろなことをこなす役者さんです。
どのシーンも舞台上では収まらず、客席を巻き込み、さらに世界が広がって見えました。
また、お衣装が皆さん美しすぎます!タケルも何着着ているのでしょう。。どれも品があり猿之助さんお似合いでした。
敵役の衣装の刺繍が壮大ったらありませんっ!女性のお着物も華やかで重厚感ありました。女性の簪と男性のかぶり物も必見です!
それだけでも見る価値あります。
ラスト、タケルが白鳥となり登場する時の唄にゾクゾクします。猿之助さんの見得はより美しかった。
タケルは泣いたり笑ったり、とても素直。そしていつも微笑んでいるのです。死して白鳥となっても、その笑みはそのまま続くのです。今日はタケルの心の壮大さに感動し涙しました。
猿之助さん、ますます良い表情です。末にまた拝見します。どんなふうに進化しているか楽しみ。
「劇場に来る時より元気になって帰ってください」
猿之助さんが口上でおっしゃいました。
大向こうが役者名でたくさんかかりワクワク。こういう雰囲気大好きです。本当に楽しかったです。
6月20日 しつこい暑苦しいやりすぎ、もっと言えば変態
新橋演舞場の興奮が未だ続いています。
ヤマトタケルはこの4年間私が拝見したことのない猿之助さんでした。初役でスーパー歌舞伎に臨む猿之助さんに受け継がれている’血’を感じました。
これは「亀治郎の会」で初めて歌舞伎を観た時にも感動したことです。役者さんの体に脈々と流れる先代たちの生命。
今回、猿之助さんに流れるおもだか屋の血を目の当たりにしたからこそ心の底からワクワクできました。
歌舞伎のことは初心者でわからないことだらけですが、私は役者さんをはじめ舞台上すべての物にその生命を感じます。そしてそこにゾクゾクするのです。
今月号の’文藝春秋’。福山雅治さんとの対談で面白い話がありました。
’龍馬伝’共演のことから香川さんの話題になり、猿之助さんと香川さんが似ているという話の中で、
「うちの家系は演技がしつこい、暑苦しい、やりすぎ、
もっと言えば、変態」と猿之助さん。
ご自分で言うところが’らしい’。変態かどうかは別として、猿之助さんの人であらざる者の演技は大好きです。
思いだしてみるとヤマトタケルは中性的で爽やか。(猿之助さん風な’これでもか’という細かな演技も見えましたが)右近さんや弘太郎さんが本当に男臭く感じたほどです。
女形、立役それぞれの役の幅の広さに驚いているのにそのどちらも香る雰囲気を出せるなんて。ますます興味津々です。
「猿之助’という名前の血肉となり歌舞伎のため命を捨てる覚悟」
猿之助さんのその言葉にいつも切なくなります。名跡は過去も知るし未来も体験できる。役者さんはその時代を懸命に生き、名跡を繋いでいく。
そういう奇跡のおかげで今歌舞伎を楽しむことができ、私も生き生きとしていられます。
たくさんの名跡の’今’を生きている役者さん方と同じ時代を生きていることに感謝です。二代目亀治郎、四代目猿之助とともに同時代を生きているのは縁だと思う。
猿之助さんには、変態的(?)な気質でもっともっと歌舞いてほしい。スーパー歌舞伎を大・大・大好きになりましたが、新しいという感じはしませんでした。
いつかさらに凄いことをしてくださる予感がします。でもそろそろ猿之助さんの古典も拝見したくなってきました来週の昼の部が楽しみです。
aya