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<2011年アメブロ編序幕⑬>
2012年に四代目猿之助を襲名する前年のお話。井上ひさしさんの「雨」で永作博美さんと共演。アフタートークを先に聞き、その後に公演を拝見。雨はとてもショッキングなストーリーでした。
6月14日 「雨」シアタートーク
現在、新国立劇場で亀治郎さん出演中の「雨」は紅花問屋が舞台です。ロビーには山形から取り寄せた紅花が満開です。
公演後のシアタートークに参加してきました!チケットを持っていれば無料だったので、私の観劇日はまだ先ですが亀治郎さんのお話を聞きたくて行ってきました。観劇なさったお客さんが半分くらいのこり、このために来た人が加わり、一階席が五分の四埋まっている感じ。年配の方、男性の方が多いのは、井上ひさしさんの作品ファンがたくさんいらしているということなのでしょうか。
公演終了後わりとすぐ始まり、まずは司会の中井美穂さんと芸術監督の宮田慶子さんが登場して、舞台を支える側の思い入れや、チラシデザインのことなどの話がありました。
そして、俳優の’たかお鷹さん’’植本潤さん’が現れました。私はお二人のことを知りません。たかおさんは「雨」は3回目、植本さんは初めて。植本さんは所属する劇団で歌舞伎のようなことをなさっているとか。
すると、亀治郎さんがやってきました!上下ブルーと黒のジャージ姿に頭にはタオルを巻いて。ブルーのスニーカーでした。客席前方に座れたのでお肌までしっかり拝見。お顔と手が相変わらずツルツルでした。
亀治郎さんは、井上作品だから受けたのか?という質問に、「仕事がきたから受けただけ~井上さんのことは知っていますが、作品はあまり観たことがない。’雨’は知らなかった」と言いつつ、観たことがある井上作品をあげるとお客さんがめっちゃうなづいてました!やはり井上ファン多し!
植本さんが「亀ちゃんは練習しないと言っているのに台詞をすぐ憶えてしまって可愛くない!」と言うと「歌舞伎は稽古が3日間。今回は一ヶ月!一ヶ月もあったら芝居に飽きちゃうから憶えない」一ヶ月’も’と何度も強調してました。
家ではせず、稽古で台詞を憶えるそうです。ちなみに台本を三回無くしたとか。亀治郎さんは、台詞はリズムで憶える話と物語の内容を掴んで憶える話があると言います。黙阿弥は、内容がないから七五調などのリズムで憶える。。と。でもいったんリズムが壊れると頭が真っ白になるそう。物語で台詞を憶えると、違う言葉が作れてアドリブがきくそうです。「雨」はほぼ東北弁のお芝居で、リズムで捕らえたらスッと頭に入ってきたと簡単そうに言ってました。
また、「雨」と歌舞伎が似ているという話も!歌舞伎はメッセージ性がない。でも感動する。理屈を越えた感動を味わえるところが「雨」も同じなのだそうです。人それぞれの感動が残ればいい。。と。
終盤に質問コーナーがありました。まさに井上ファン二人からの質問でした。一人は「亀治郎色が強く、今までの井上作品と違い新鮮でした。亀治郎さんだからという作り方をしているのか?」みたいなことを質問。
宮田さんは「目指す頂上が決まっていれば、そこまでみんながどんなアプローチをしてもいい」みんなの個性を大事に。。という感じでおっしゃってました。
その男性は、亀治郎さんの所作や見得が格好良かったとも言っていたのに対し亀治郎さんは、「歌舞伎役者である自分にしかできないことは入れていく。でなければ僕でなくてもいいと思うし。」これはシェークスピアの時も言ってました。
今回も、江戸の人はよくこうしていたから。。など考え、細かくこだわって取り入れているそう。
共演の永作博美さんとのエピソードでは、永作さんに裃(かみしも)を着付けてもらうシーンをあげてました。亀治郎さんは自分でできるので、いかに手伝わないようにするか大変みたい。二人で何度も練習なさったそうです。
1時間、あっという間。まだまだ面白い話がたくさんあり、来週舞台を拝見するのがますます楽しくなりました。なんと早替りもあるのだそう。装置にもこだわりがあるようなので楽しみです。ラストシーン(?)の木が組んであるセットは’雨’という字を表しているのだそうです。
亀治郎さんの哲学は変わらずそこにありました。パワーアップしたかもしれません。いたずらっ子のような笑顔と時折見せる鋭い目に、ぶれない心を感じました。どんなフィールドでも揺るがない心。
休憩を入れて3時間30分の大作です。亀治郎さんはお客さんが飽きないか心配をしていました。飽きないように頑張ってる、と言ったら他の二人が「そんな余裕ない!」とつっこみを入れてました。歌舞伎に慣れている私たちは平気ですけど。まだ日によってはチケットがあるようです!29日までです。
6月21日 新国立劇場「雨」
井上ひさし氏の作「雨」。亀治郎さんが主人公’徳’を演じています。先日のシアタートークの内容を頭に臨みました!
江戸の物拾いで浮浪者同然の’徳’は、山形の平畠で一番の紅花問屋’紅屋’の行方不明の婿に瓜二つ。間違えられたことをきっかけに、その婿になりすますことを思い付く。美人の奥さんも見てみたくなってしまった。方言も勉強し、記憶を失ったふりをして’紅屋’に入り込みます。。。
お客層は年配の方が目立っていました。出演者の方は、テレビで拝見する方が多くて親しみが湧きます。舞台上はシンプルで、廻り舞台をフルに活用しての場面転換は自然でした。
立っている柱が、遠目で見ると’雨’という文字になっていて、漢字の真ん中の縦線が床から天井まで巨大な五寸釘。ラストの亀治郎さんが、ずっとその五寸釘の柱の前で演じていて、
私の位置からは亀治郎さんが背負っているような。。キリストを思い出した瞬間もありました。
亀治郎さんは江戸弁から、だんだん東北弁になります。紅屋の婿に成り済ますためです。東北弁の流暢なこと!何を言っているかわかりませんでしたから(笑)とてもリズムがよくて耳に心地よかったです。
江戸弁と東北弁の使い分けが凄いです。そして言葉も態度も’紅屋’に馴染んでいく姿が自然でした。’徳’はウソを守るため、偽物だと知る人物を殺して罪を重ねます。殺し場は歌舞伎のように美しく妖しかったです。
それに、女性と二人のシーンの姿が綺麗でした。亀治郎さんと妻の永作さん、愛人の梅沢さん。二人での立ち姿、座り姿。。。普段の亀治郎さんは女方で逆の立場なのに。何だかみょーに色気がありました。
また、番傘さばき、着物さばきはピカイチ!歌舞伎でよく出てくる、逃げる時の足がガクガクも健在です。やはり歌舞伎役者さんの動きは全舞台に通用するのですね。いつも以上に魅せてくれていてよかったです。
途中、偽物だとバレそうになるのを妻’おたか’が助けます。信じてくれるおたかの気持ちが心に染みて言う徳の「ありがとう」はキュンとしました。徳がおたかに想いを寄せている温かい空気が流れました。
でもラストにどんでん返しが待っています。騙していたと思っていた’徳’が、妻おたか、お店、村、すべての人に騙される。徳は人や村が生きていく犠牲になるのです。叫びたいくらいびっくりしました!徳が婿に成りすまし本物になろうとした努力が切なすぎる。
そして、女性はコワイ。。本当の夫婦になれそうなくらいだったのに肩すかしくらった感じ。徳が可愛そうで切なかった。そして愛しくなりました。東北弁はとても可愛らしくクスッとなるくらい愛らしい。でも見終わると、その愛らしさが逆に恐ろしい。
言葉を偽り、自分を偽る。。。「言葉」とは自分自身なのだということを知りました。
亀治郎さん、いつもどおり生き生きしてスピーディ!早変りも早い!お家芸なのよ~と心でつぶやいてみました。雨と雷の音が効果的に使用されていました。パーカッションが生演奏で、下手で黒子姿の方が演奏。
これが良かったです!自然界の音、役の心情を表す音、様々な役割があり、ストーリーに添った想いがこもった自然な音色でした。立役でこんなに艶っぽい亀治郎さんは初めてでした。長丁場ですがラストへの猛ダッシュがすごく刺激的です。お時間ある方は是非。
aya