楼閣の本屋

本屋さんで働きたい。おばあちゃんになったら本屋を構えて、自分が読んだ素敵な本だけを置きたくて、地元の人に愛されるおばあちゃんになりたい。だけど、「紙の本は廃れる」と言われる。

本屋の、あの 空間は唯一無二だ。小説の表紙をじっくり見ている人、教材を熱心に吟味している人、好きなアイドルの雑誌を立ち読みしている人、絵本に夢中になっている子ども。来店理由はなんでもいい。

楽しみにしていた新刊が、発売日の前日に店頭に並んだ時の嬉しさ。本を購入し、内容に思いを馳せながら家に帰り、本を開き、読み終えるまでの胸の高鳴り、余韻。本屋をグルグル回り、長考の末にやっと決めた本をレジに持っていき、ブックカバーをかけてもらう時は、愛情が芽生える。

小さい頃から、地元にあるイオンの中で1番好きな場所だった。本屋はいつ来ても楽しい。なのに、無くなるなんて。

私がおばあちゃんになったら、私ですら「紙の本なんて」と思うかもしれない。それなら、今、アルバイトでもいいから本屋で働きたい。理由は紙の本が愛おしいから、それだけ。

本に出会いたい。購入した本のことだけを考えながら家に帰りたい。表紙が傷つかないように優しくビニールを破いて、少しドキドキしながら表紙を開きたい。読み終えたらカバーを脱がせて、本体の表紙に絵とか4コマ漫画とかないか確認したい。本屋だって私のことを待っているんじゃないか?さすがにそれはないか。

そんなことをぐるぐると考えながら、老舗のデパートに足を踏み入れる。本屋は、この建物の8階にある。

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