むるめ辞典
■電話
[読]でんわ
携帯電話がなかったころの話
[例文]
あたりの闇にもしっとりと潤いを与える雨の夜に初めてできた恋人と電話をしていた。
付き合ったばかりの私たちには話すことがたくさんあった。何が好きなのか、誰と仲が良いか、今ほしいものは何か、目の前に何があるか、今日は何を食べたかとか。とにかく話題はなんでもよかった。私たちは毎晩のように長電話した。
彼女はサックスを欲しがっていた。
私は彼女の欲しがるものは、なんでも手に入れてやりたかった。でもサックスは安くなかった。
電話代さえ自分で払っていない当時の私は、これから続く彼女との電話の通話料金の累計で、新品のサックスが2台くらい買えたことも知らない。
結局、私が彼女にプレゼントできたものはジュディアンドマリーのCDが一枚と、この日の雨夜のような淡い思い出だけだった。
サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。