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柴田翔「ノンちゃんの冒険」
中3のとき、クラスの女の子たちが「ノンちゃん読んだけどおもしろかったあ」とめずらしく本の話をしていたので、わたしも無理やり会話にまじって、「ああ、おれも最近読んだよ。妊娠したノンちゃんが、彼氏に捨てられて」とかしゃべりだしたら、みんなににらまれて輪のなかから追いだされてしまいました。
あとで聞いたら、女の子たちは石井桃子の「ノンちゃん雲に乗る」の話をしてたらしい。映画にもなった有名な童話ですね。わたしのほうは当時話題だった柴田翔の新刊「ノンちゃんの冒険」とばかり思っていました。かわいい子もいたのでちょっとかっこをつけようとしたのですが、雲に乗ったノンちゃんがいきなり妊娠させられたら、そりゃあみんなが怒りだすのも当然か。
この小説は柴田翔のデビュー作「されど我らが日々」のまったく裏返しで、底抜けにあかるい女子大生が恋人とわかれたあと妊娠に気がついて、結局こどもを産むことにする話です。全共闘世代の挫折した若者たちの物語ですね。主人公のあかるさが痛々しかった記憶だけがのこっています。