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20250129
めちゃくちゃ重いお芝居を3時間くらって、帰りの地下鉄に揺られている。
あのお芝居のあとに聴きたくなった音楽は、サニーデイ・サービス「血を流そう」のライブ音源だった。
まさに心が血を流しているような。
めちゃくちゃ重いんだけど、嫌な重みとかではなく。しっかりと自分の血肉になるようなずっしりとくるお芝居だった。
今日は、新宿にある紀伊国屋サザンシアターで、ケラリーノ・サンドロヴィッチが手がけた舞台『消失』を観劇。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、ケラさん)のお芝居は何度か拝見したことはあるが、生で観るのは数年ぶり。
軽く事前情報を見た感じだと、結構ずっしりと来るストーリーっぽいなと思っていたので、ある程度覚悟を決めて会場に向かった。
とはいえ出演者は、藤井隆や岡本圭人、我が家の坪倉と、よく知っているメンツが出ていたので、間違いはないだろうという謎の自信はあった。
そしてその自信は確かなものとなる。
もうなんと表現したらいいのか。いつの時代なのか、どこの国の人なのか、この人とこの人はどういう関係なのか、色々ことが曖昧なまま進んでいく。
気がついたらもうそんなことはどうでも良くなり、ケラさんの世界に吸い込まれてしまっている。
物語に通底しているのは、不穏な空気と、決して平和ではない情勢だ。
その中に多少クスッと笑える箇所のある前半の約1時間、15分の休憩を挟んだのち、どんどんシリアスな展開になっていく後半の約2時間。
とくに「ナンダカンダ」とかで明るくてユーモラスなイメージの強かった藤井隆が、ボケ一切ナシのシリアスな演技をしているのが新鮮だったし、めちゃくちゃハマっていたのも意外だった。
最後までどんな人柄なのかイマイチ掴めなかったお笑いトリオ・我が家の坪倉の演技も舞台な独特な刺激を与えていたように思う。
そして私の幼い頃からの推しの1人でもある岡本圭人くん。相変わらず綺麗な顔をしてるなぁと、双眼鏡でじっとりと眺めたりしながら、物語を追っていた。
紗幕にタイトルが出たり、物語の進行を告げる文言が出たりするのも、ケラさん舞台の特徴とも言えるだろう。
おかげでストーリー展開が分かりやすくなるし、ちょっと映画っぽい感じでも観られた。
終盤のシリアスさはもの凄くて、会場がしんと静まり返る中、重くて暗いシーンが続いていく。
最後にキャスト全員が出てくるカーテンコールの時も、全員神妙な面持ちで頭を下げてくれて、舞台の余韻を壊さないところもよかったな。(満面の笑みを浮かべる藤井隆もちょっと期待していたが)
世が世なので、こういう重いお芝居も、自分とは関係のない遠いところのお話とは思えなく、複雑な気持ちで会場を後にした。
決して爽快ではないけれど、心に1つ重くて大事な何かを残したような、そんな観劇体験だった。