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ポール・モリセイ監督&ウド・キア主演の映画「悪魔のはらわた」4K UHDレビュー「僕は…人造人間(ゾンビ)だけが『人間の尊厳』を失ってないと言う皮肉に…涙が流れるのです…」

フランケンシュタイン男爵(ウド・キア)が理想の死体の部位を集め,
コレを縫い合わせ…電気をビリビリっと流し…
理想の男女の「つがい」を創造し…
コレを交配させ…新人類を産ませようと目論むも…
「理想の男子くん」の頭部は男性にしか興味のない同性愛者のモノで…
「理想の女子さん」の理想的な裸身を見てもピクリとも反応せず…
男爵が小池一夫先生の漫画の登場人物の様に…
「どおしてエレクチオンしないのォォォーッ!!!」
と大絶叫するエロチックコメディホラーの傑作…
「悪魔のはらわた」の4K UHDが…本来は8月初旬に出る予定が…
諸般の事情で2か月遅れ…10/1に漸く円盤が届き…
先程視聴が完了したので…レビューを書きたいと思う…。

「理想の男子くん」の頭部に選ばれた
若者の名をサシャ(スルジャン・ゼレノヴィク)といい…
男爵に体を切り刻まれ…
人造人間(本作ではゾンビ(ZOMBIE)と呼ばれている)に改造されても…
人間だった頃の意識が残っていて…
ただ…人間らしく死ぬ事だけを希う(こいねがう)が…

自分をこんな体にした男爵…
そしてこんな体の自分に夜伽を命じた
男爵の色情狂(sex-maniac)の姉カトリン(モニク・ヴァン・ヴ―レン)だけは…
どうしても生かしておくコトが出来ず…
理想の女子さん
(ラリラ・ディ・ラッツァーロ=女の人造人間=female zombie)も
死なせてやりたいと考えている…

ロクデナシしか出て来ないこの映画で…
唯一「人間の尊厳」を失ってないのが…
人造人間(ゾンビ)であるという皮肉となってるのだ…。

男爵…
オマエが幾らサシャを切り刻もうと…
サシャの「人間の尊厳」には傷ひとつ付けられなかったなあ…
ええ?
男爵よォォォ…

ジョー・ダレッサンドロ演ずるニコラスという絶倫の農夫は
サシャの子供の頃からの親友で…
女性経験がないまま出家すると言うサシャに…

「サシャサシャサシャサシャよォォォ~」
「オンナも知らずにパンと水生活の坊主になるってか?」
「ヨシ!ここはひとつオレが一肌脱いで…」
「オマエを売春宿に連れて行き…」
「オマエをオトコにしてやろうじゃないか!」

という…「種馬」である以前に
非常に男気溢れる「いいヤツ」として描かれ…
そんなニコラスをサシャは…
売春宿で売春婦に奉仕されてる間中ガン見しているのだ…。

なるほどなあ…こうやって…
「サシャの本心」を描いてるのか…。

サシャは…決してニコラスに「本心」を明かさず…
「醜い人造人間」としてロクデナシ共を道連れにして…
地獄に堕ちる道を選ぶ…。

ニコラス「やれやれ…コレでオマエに命令出来る奴は誰もいなくなった…」
「さあ…一緒に帰ろうぜ…」
サシャ「帰って…どうするんだいニコラス…?」
ニコラス「マトモな病院でオマエを診て貰うさ…」
サシャ「オレはココに残る…」「ダレにもオレは治せない…」
「ニコラス…オレはもう…コイツ等と同じバケモノなんだ…」
「バケモノはバケモノらしく…」「ココで…生まれた場所で死んで行く…」
「ソレが一番…『正しい』んだよ…ニコラス…」

自分で自分の体を…
「自分の気持ち」と共に…
その剛力で解体し…果てて行くサシャ…

映画監督のリチャード・ラーフォーストは…
この映画の…
この場面に猛烈に感動し…

後年映画「武器人間」(2013年)で…
フランケンシュタイン博士の孫…
ヴィクター・フランケンシュタイン博士が…
ナチに加担して武器と死体を縫い合わせて電撃を加え…
武器人間(ZOMBIE+ROBOT=ZOMBOT)を創造するのを
7人のロシアの偵察部隊が探る映画を創り…
ドイツ人もロシア人もロクデナシ揃いのなか…
地下秘密工房で武器人間を創り続ける
ヴィクターを殺し…
「ナチ(極右)の右脳と赤軍(極左)の左脳を連結して電撃を加え,右も左も無い
コスモポリタン(世界主義者)=新人類を生み出し戦争を終結させる」
という野望を砕き…
その首をもぎ取り…
ただひとりモスクワに生還し…
スターリンから英雄勲章を叙勲される隊員に「サシャ」と名付け…
本作に最大の敬意を払っている…。

ラーフォーストは…
本作の「サシャ」にも生きていて欲しかった筈なんだッ!
本作の「サシャ」も…何らかの「功績」で表彰したかった筈なんだッ!

「武器人間」はな…
「悪魔のはらわた」に対する…
「人間の尊厳」に対するッ!
大いなる敬意によって生まれた人間賛歌なんだッ!

閑話休題

男爵と姉の…近親相姦の結果生まれた
「歪んだ子供」を演じるのは
マルコ・リオフレディとニコレッタ・エルミ…。
ニコレッタ・エルミは…
「サスペリアPART2」でトカゲを虫ピンで留めて親父に打たれてた
レオナルド・ダ・ヴィンチ小学校に通ってる「イヤなガキ」を好演し…
ずっと後年…「デモンズ」でモギリ嬢を演じても…
奇妙な造形の人相が少しも変わってなかったな…。

僕は…本作のブルーレイも持っているが…
4Kは画質が飛躍的に向上し…
観ていて常にストレスを感じ続けた
ブルーレイ盤とは雲泥の差となっている。

4Kには約72分の日本語吹替が搭載されていて
井上真樹夫さんの男爵…
堀勝之祐さんの演ずる
男爵の助手オットー(アルノ・ジュエキング)の掛け合いは最高で…
中西妙子さん演ずる色情狂も何というかこの…堪らんものがあります…。

また4K盤は…局部のモザイク・ボカシが一切なく…
ダレッサンドロの一物を心ゆくまで堪能出来…
ゼレノヴィクの一物もチラッと拝むコトが出来ます…。

創作者の創造物が例え一部であっても情報が遮蔽されるコトには反対です。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の「両手」が猥雑と判定され…
「両手」が遮蔽されたまま公開されたとするなら…
僕が吉良吉影でなくとも容赦は出来ません…。
吉良吉影の…「勃起」を遮ったら…漏れなく爆死すると言うのに…。


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