映画「SFボディ・スナッチャー」レビュー「追悼ドナルド・サザーランド…パッとしない風采のサザーランドが試行錯誤しながら悩む姿が70年代映画の味わいなのです。」
宇宙から飛来した意志を持った寄生植物が人間を巨大なサヤに複製し
「人間モドキ」を生成し本物と取って代わる侵略SF。
人間モドキの侵略に逸早く気付いた
ドナルド・サザーランドとブルック・アダムスは
事態を阻止しようと試みるも,
既に町全体に人間モドキが蔓延し,ふたりを追い詰めて行く。
派手な特撮も豪華な音楽も無く
「奴等」の侵略の過程を淡々と地味に追って行く作風。
奴等には親玉も弱点も明示されず,
真綿で首を締める様に追い詰められて行く描写に
近年絶えて久しかった「サスペンス」を再確認する。
サザーランドがパッとしない風采で悩みながら試行錯誤する姿に,
うだつの上がらない自分自身の物語として共感するのが70年代映画の特徴。
ヒーロー不在のまま,絶望だけが充満して行く。
途中からね,こりゃハッピーエンドは有り得ないって視聴者も皆気付き,
地味で悲惨なオチに納得する他無いのである。
最初から怪しいレナード・ニモイは期待を裏切らず,
冷静さを欠いて泣き叫ぶ担当の
ヴェロニカ・カートライトは「エイリアン」のランバートそのもの。
って言うか,いずれの作品も
彼女は自身の「柄」を最大限に生かして演技してるのである。
一度もハレの日の来ない陰鬱な展開に痺れる僕なのでした。
ラストシーンの「サザーランドの叫び」も忘れ難い。
「スター・ウォーズ」が持ち込んだ
『物語は流れる様に進むべきで場面転換もパッと行うべし』
と考える向きには1時間55分って尺は展開が鈍重な上に長過ぎるだろう。
70年代映画のペースが好きな僕ですら長いと感じたので星1つ減点。
ドナルド・サザーランドの訃報を受け取り,誠に残念に思う。
「針の眼」「赤い影」…独自の存在感を発揮する得難い名優の逝去を悼む。