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アレックス・ウェスリー監督の映画「ゾンビーズ・イート・マイ・ガッツ」レビュー「かつてロシアで…未曾有のバイオハザードが発生し…その愚行をビデオに撮影して編集したのが本作なのだ…」
ロシアの天才科学者ブルーノ・マッティ博士は人をゾンビに変え
「ゾンビの軍隊」として戦力とする
生体兵器デス・ワン開発の過程で人体実験を繰り返していた…。
だが当局は実験の打ち切りと
研究所・研究結果・研究資料全ての焼却を決定する。
マッティ「『焼いた』くらいでワタシの『デス・ワン』が死ぬとでも?」
「『デス・ワン』は死なないッ!」
「例え研究所を焼き…人体実験した献体を焼こうともッ!」
「焼いた煙が『デス・ワン』を蔓延させ…」
「この国に未曾有のバイオハザードを引き起こすだろう…」
「いやッ!感染域がロシア全土に広がっても
『デス・ワン』は増殖を止めないッ!」
マッティの警告は…
「キチガイ博士の妄言」と一笑に付され…
全く一顧だにされず…焼却が実行される…。
『デス・ワン』を帯びた煙は…
飲料水に…食品に…空気中に…影響を及ぼし…
ヒトをゾンビへと変貌させて行くのであった…。
コレは…かつてロシアで起こった愚行の記録であり…
VHSビデオに記録された内容を「映画」の形式に編集したものなのだ…。
ロシアにはアレックス・ウェスリーという…
素晴らしいキチガイが住んでいて…
「サンゲリア2」「ゾンビ4」「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」
「ヘル・ゴースト 悪魔のスケアクロウ」「サイコ・コップ2」
のビデオを擦り切れる程繰り返し観て…
「いつか自分が映画監督になったら,
これらの映画の監督や出演者に自分の映画に出て貰うんだ!」
って妄想を心中でずっとずっと育み続けていた…。
「ブルーノ・マッティ」とは…彼が敬愛してやまない
ゾンビ映画「サンゲリア2」「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」の
監督の名であり…
本作のストーリーラインに大きく影響を及ぼしているのだ…。
本作は2004年に制作された尺が42分のゾンビ映画の習作と言え…
2010年に本作の続編…「ゾンビ・インフェクション」を製作する
橋頭堡(きょうとうほ=足がかり)なのだ。
『デス・ワン』に感染すると…あるものの肉体は溶け…
あるものは内臓をゲロとして吐き…
あるものは内臓を排泄しその内臓を喰い…
死ななかったものは食人鬼と化して生者を襲うのだ…。
ロシアの大地には「起伏」というものがなく…
果てしなく広がる雪原に一本道だけがあり…
「起伏」がないのだから一本道から見た光景が…
常に左右対称に見えると言う…
ある種の心理試験を受験してるが如き…
微塵も現実味の感じられない光景が無限に続き…
ガスマスクを装着した若者が一本道をノタノタ歩き…
その遥か後方を食人鬼がノタノタ歩いて追うと言う…
「緊迫感の無い一乗寺下がり松」が延々続き…
それがかえって…独特の緊張感を生んでいるのだ。
多少「油断」しても構わないが…
「寝る」と食い殺される不可解な緊張感…。
ビデオ画質の粗さが逆に迫真と説得力と真実味を帯びさせ…
かつてロシアで未曾有のバイオハザードが起こったことを
信じさせるのだ…。
本作は…ハッピーでない終わり方をする上に…
円盤の仕様でエンドレス再生されるので…
輪の様になった時の流れの中で…
永遠に続くゾンビと人間の…
「緩慢極まりない鬼ごっこ」を無限に堪能できる趣向は…
多分に悪夢的で…本作の作風を良く捉えていると言える…。
なお…続編の「ゾンビ・インフェクション」では
ブルース・マッティを
「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」のフランコ・ギャロファロが演じ…
ゾンビアポカリプスを物ともせず…チェーンソー・ショットガン・
素手の格闘で無双する無敵の傭兵テッド・ヴァ―ノンが
大活躍することとなる…「力技」でゾンビに対抗するのが
アレックスのやり方で…
「オレのコドモの頃のヒーローは絶対無敵」理論に…
彼の本性が「コドモ」であると気付かされるのだ…。