カトリオーナ・マッコール主演の映画「ベルサイユのばら」レビュー「マッコールの『薔薇のさだめ』」
池田理代子先生の漫画「ベルサイユのばら」は
1979年にカトリオーナ・マッコール主演で実写映画化されている。
本作品の制作にあたって
「フレンチミュージカルの名匠」と呼ばれた
ジャック・ドゥミが監督となり
「マエストロ」と呼ばれるミシェル・ルグランが音楽を担当している。
両者はカトリーヌ・ドヌーブ主演の
ミュージカル映画「シェルブールの雨傘」(1964年)でも
それぞれ監督と音楽を担当し
第17回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞している。
またフランス政府の協力をとりつけ
本物のベルサイユ宮殿での撮影を許可されている。
主演のカトリオーナ・マッコールの「物語」を紡ぎ…
長編CMを製作したのは資生堂。
彼女を「出生」から追って…
19歳になってパリにやって来た女優志願の少女が
見事オスカル役に抜擢されてシンデレラになる物語。
ナレーターは
「奥様は魔女」のナレーターとしても有名な中村正さん。
♪おさないカトリオーナ
なにをゆめみる
あこがれのパリにきて
ひとり ひとり ぼやく♪
クレジットは出てないけど
この「カトリオーナ・マッコールのテーマ」を歌ってるの
多分「薔薇は美しく散る」を歌われた鈴木宏子さんなんだよね。
非常に特徴のある歌唱法なので間違いないと思う。
フェンシング(剣術)の稽古に励む
オスカル(カトリオーナ・マッコール)の模様は眼福ですね。
資生堂の「劇的な、劇的な、春です」ってキャッチフレーズは
青池保子先生の「エロイカより愛をこめて」でも引用されてますね。
激務を終えたエーベルバッハ少佐が
「30分たったら…おこせ…」
って眠った後に伯爵が言うセリフ。
青池先生の「エロイカ」は…
あの一瞬だけオスカルであり…
カトリオーナ・マッコールでもあったのだ…。
もうね.。
この映画に入れ込む
本邦の力の入れようが分かろうというものだ。
言わば「必勝形」で臨んだ本作品であったが
総制作費10億円に対して興行収益は9億3千万円止まり。
要するに壮絶に壮大にコケた次第である。
本作品でオスカル役を演じ本作が映画デビュー作となった
カトリオーナ・マッコールは
翌年(1980年)からルチオ・フルチ監督のゴア描写満載の
3本のゾンビ映画
マッコールに蛆虫シャワーが降り注ぐ「地獄の門」
彼女が視力を失ってあの世(=向こう側=ビヨンド)を彷徨う「ビヨンド」
彼女の家の地下に何百年も生き続けるゾンビ博士が住んでた「墓地裏の家」に立て続けに出演しホラー映画愛好家たちからは歓迎されている。
ホラー映画愛好家はね…
「いとも高貴なオスカル様が卑しい卑しいゾンビ映画に3本も出てくれた」と涙を流しながら手を合わせて有難がったのです。
確かにマッコールの人生は
資生堂がプロデュースした「物語」の通りにはならなかったけど
彼女は誰かに用意された成功と安定が約束された道を選ばず
「華やかに激しく」波乱万丈の生涯を送っているという意味で
オスカルよりもオスカルらしく「薔薇のさだめ」を生きたと思います。
因みに本作品の原題は「Lady Oscar」(レディーオスカル)といい
ずっと後年になってから原作「ベルサイユのばら」公式と
株式会社バンダイとが手を組み
コスメブランドサイト「クレア・ボーテ」を立ち上げ
一部の商品を「レディーオスカル」と名付け
本作品の僅かな「名残り」を感じさせている。
先般上梓された映画秘宝誌の
「ルチオ・フルチとイタリア血みどろ映画地獄の門」では…
カトリオーナ・マッコールのコトが左程触れられず…
コノヤローと思い…本記事を投稿させていただいた次第です。
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