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【読書感想】Kill Me Again and Again

概ねTwitterからの転載。でもってそれに申し訳程度の追記をしたもの。

読了しました。参加者5人のうち、結局誰一人として心から10億欲してるヤツいなかったのが面白かったなぁと(以下ネタバレ感想です)。

46歳が強キャラ扱いだった点について、作中では「躁状態」だったからと言及されているけど、彼はこのゲームで唯一「“自分殺し”に前向きなキャラ」で、それこそが強さの要因だったのではないかと思うている。

「いや、26歳もそれなりに卑劣な手法で36歳殺しにかかったやないけ」というツッコミあるかもわからんけど、26歳の場合は36歳を「人生ぶっ壊しやがったクズ野郎」として見ていて「10年後の自分」としては見ていないんですよね。

もちろん頭では違う時代の自分だと解っているんだろうけど、どこか10年後の自分を呼称する“他人”として見ている。だから、どう見ても勝ち確の状況で、36歳をいたぶるとか、罵るとか、そういう現を抜かしてしまう。 絶対“自分”殺すマンの46歳なら十中八九こんなグダることはしない。

「なんで“自分”と認識していたらそいつをいたぶったり、罵ったりしないの?」と訊かれたら答えは簡単で自分の人生ぶっ壊した「他人」ならまあ腹いせにいたぶりたくなるかもわからんけど、自分の人生ぶっ壊した「自分」なら“一刻も早く視界から消し去りたい”わけで。

26歳が生き残れなかった──でもってやたら小物っぽかった理由はこのあたりだと思うている。折角(?)の自分同士でやり合うデスゲームなのに、他人同士でやり合うフツーのデスゲームでやる立ち回りをしてしまった。

だから、46歳がこのゲームで猛威を振るえたのは躁状態で頭が冴えていたというのも勿論あるんでしょうが、彼がこれまでの人生を振り返って、5人の参加者中ぶっちぎり「自分自身に対する殺意が高かった」からではないかと。

46歳の立ち回り、36歳からはモラル欠いてるやら狂ってるやら評されてたけど、そりゃダメだった“自分”手にかけるのにモラル気にするヤツはおらんよなぁと(第1話で46歳が16歳に向けて引き金を引くシーンがあるのだけれど、一周目は10億手に入るチャンスを無碍にしようとする16歳をソッコー排除したかったと映る一方、二周目以降だと「俺たち同士で戦うなんておかしい」という青い理由でゲームを中止しようとする過去の自分が直視に耐えなかったのではないかと個人的には映る)。

というわけ?で自分同士でやり合うデスゲームモノとして、非常に満足度高い作品でした。

蛇足。ただ、欲を云えば個人的に本作の書き出しは「今日も風呂に入れなかった。」の方が良かったなぁと思うている。 少なくとも私にはあの書き出しのみで、かび臭い風を送る瀕死のエアコンも熱帯夜の布団に横たわる俺も充分見えていたので。

追記。間をおいて気づいたけど、5人中ぶっちぎりで自分への殺意高かったの46歳じゃなくて56歳だったわ。 16歳勝たせることで実質しくじってきた自分の全消去図ったワケだし。

さぱっと全滅させていっそなかったことにしたかったのが56歳で、どうしても自分の手で仕留め切らなければ諸々治らなかったのが46歳だったのかなと。

何はともあれひとまずの完結おつかれさまでした。面白うございました。

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