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✨️【メルヘンタロット物語】✨️自分を信じて歩む道✨️


🔷新作公開しました
 
「✨️メルヘンタロット物語0番:自分を信じて歩む道✨️」を投稿しました!🃏✨
 


編物教室を開く夢を叶えようとする主人公。しかし、不安と恐怖が彼女を襲います。そんな彼女がセラピーを通じて、心の中のオオカミと向き合い、自分の道を信じて歩き出すまでの感動のストーリーです。恐れを乗り越えたい方、ぜひご覧ください! 



編物教室が夢




【メルヘンタロット物語】自分を信じて歩む道


<不安で落ち着かない>


「編物教室を開く。ずっと夢見ていたはずなのに、なぜ今になって、私はこんなにも怖がっているのだろう……」私は念願だった編物教室を開く準備ができたのですが、とても不安で落ち着かないのです。

私は、子どもの頃、おばあちゃんに教えてもらった編物が楽しくて、大好きになりました。ずっと編物をつづけて、高校卒業後は、編物の専門学校に入学したのです。

「一目一目編んで、それが少しずつ形になる楽しさや、作品ができた時の達成感を多く人の知ってほしい!」

そう思って、在学中に編物講師の資格も取って、卒業後、2年間、手芸品店で働き、編物教室を開く資金も貯めました。実家の使っていない部屋を改装して、やっと準備ができたのです。

編物教室を開く準備は整ってきたのに、私はいつも誰かに見張られているような気がして、落ち着かないのです。背後に何か冷たい視線を感じるような気がして……。でも、振り返ると誰もいません。どこか獣のような、鋭い目が私をじっと見ているような感覚が消えないのです。



不安で落ち着かない



<メルヘンタロット>


街を歩いていると、ウインドウに映る自分の背後に一瞬、動く影が見えた気がしました。ぱっと振り返ると何もいないのです。でも、私は敏捷な獣の気配を感じました……。いつも何かに追われているような、監視されているような恐怖感が、波紋のように広がったのです。

ある時、街で見かけた「メルヘンタロットセラピー」というウエルカムボードに、私は惹きつけられたのです。私を悩ませる不安や、誰かが私を見張っているような恐怖感は、その時、もう耐えられないほど大きくなっていたのです。

—「メルヘンタロットセラピー」、タロット占いだわ!

「タロット」の文字に体が勝手に動いて、私はサロンのドアを開いたのです。

「いらっしゃいませ。セッションですか?」
「ああ……、は、はい」
「私はセラピストのドレームと言います。ドレームはスウェーデン語で夢という意味なんですよ」

あたりを見まわすと、サロンはアイボリーが基調の明るい部屋で、木の味を活かした北欧調の家具が置かれています。観葉植物もあって洗練された落ち着いた雰囲気だったのです。

ドレームさんは、簡単な説明を済ませると、慣れた手つきでカードをシャッフルし、カードをテーブルの上に扇型にならべました。

カードを選ぼうとした瞬間、背後で何かの気配がしたような気がして、手が止まったのです。振り返っても、気配はするのですが、何もいません。

闇の中で私を凝視して、怖いカード、悪魔に首を鎖で繋がれた男女のカードや、逆さに吊るされた男のカードを選ばせようとするかのように。不安が胸を締めつけ、私は震える手を伸ばしたのでした。


セラピスト:ドレームさん


<本当は人が怖い>


私が引いたカードには、赤い帽子をかぶった女の子と隅のほうに小さくオオカミが描かれていて、「赤ずきん」を思わせました。

「お嬢さん、このカードからどんな印象を受けたか、私に話して下さいますか」

ドレームさんがカードの説明をしてくれるのかと思ったら、カードを見た私の印象を尋ねたのです。

「女の子の指に綺麗な蝶が止まっています。でも、女の子は実は昆虫が苦手なので、蝶が少し怖く感じています。蝶の扱い方がわからないので、蝶を傷つけて死なせてしまわないか不安です。それに、隠れているオオカミが女の子を見張っていて、スキをついて襲うつもりでいるようで、怖いです」

「蝶は、綺麗だけれど、怖いですか?」
「はい、見ているだけだったら、綺麗だけれど、触るのはちょっと……」
「見ているだけがいいんですね?」

優しく問いかけるドレームさんの目はまるで、私の心の奥底に隠れた恐れを見透かしているかのようだったのです。

「あなたはずっと、誰かに傷つけられるのを恐れてきたのかもしれませんね」
「え! ええ!」

私はドレームさんのことばにドッキっとしました。実は、人が苦手なんです。遠くで観察するのは面白いけれど、実際につきあうのは怖いのです。小学生の頃にいじめられたことがあるからでしょうか。

—人が苦手なのに、編物教室を開いちゃった……。もしかして、不安や監視されているような恐怖と、関係あるのかしら……。

ぼんやりと何かが見えて来たような気がしました。


<不安の原因に突然気づいた!>


私は何かモヤモヤするものを感じました。それは、やっぱりオオカミなのです! オオカミは女の子を見張っていて、スキを見せたら、襲ってくるのです。

それは「誰かが私を見張っている」という私の気持ちが反映されているように感じました。

不意に私はものすごい恐怖に襲われました。「何だろう! 何だろう!」と動揺するうちに、厳しい表情の祖父の姿が浮かんできたのでした!

女性が活躍することを極端に嫌った大柄で鋭い目をした怖い祖父。目立つ女性は目の敵だったのです。祖父は一家の支配者でした。祖母も両親も祖父には逆らえなかったのです。

「女のくせに目立つなんてけしからん! 女は大人しくしておけ!」



心の中のオオカミ


<いつもビクビクしていた>


祖父は、私がまじめに勉強したり、編物で褒めてもらったりするのをたいへん嫌いました。編物作品がコンテストで賞を取った時などは、特に不機嫌だったのです。

「なぜ女の子は頑張って目立ってはいけないの!」と思っても、「女の子のくせに口答えするな! 編物で目立っていい気になるなよ!」と獲物を狙う獣のように私を射すくめ、唸るような声で怒鳴る祖父が怖かったのです。祖父が私を見張っているようで、いつも私はビクビクしていたのです。

祖父はずいぶん前に亡くなりましたが、目立つと怒った祖父への恐怖感は、しつこく私の心にこびりついていたようです。

「目立ったら叱られる。目立ってはいけない!」ともう一人の私が私を見張っていました。

「そうだったのか! 不安や見張られているような恐怖感の原因はこれだったんだ!」

私は突然気づいたのでした。オオカミ、つまり私の「無意識の恐怖」の正体がハッキリしたのです。私はそれだけでもホッとしました。

「そうだったんですね。たいへんでしたね」

ドレームさんの声で、私はわれに返りました。夢中で祖父のことを話していたようです。



頑固で怖い祖父


<どんなに大人しくしていても文句を言う人がいる>


祖父のことを話すと、どんなに目立たなく大人しくしていても、「大人しいから」「真面目だから」という理由で、いじめられた小学生時代を思い出したのです。

いじめられた時も編物が心の支えでした。子ども作品展には何度も出展し、入賞したこともあったのです。小学生向けの雑誌に私の作品が掲載されたこともありました。

「大人しくて目立たないくせに生意気だ!」といじめっ子たちが言ったのです。私はもっといじめられるのが怖くて、ひたすら我慢していました。

「この子なら意地悪をして何を言っても黙っているだろう! 何をしても耐えて抵抗しないだろう!」といじめっ子たちは思ったのでしょう。


いじめられた


<恐れることはない!自分の信じた道を行こう!>


でも、ある日、いじめっ子が「編物なんて時間の無駄! 賞を取ったからっていい気になるなよ!」と言ったのです。祖父のように。

その時、私は心の中でせき止められていた怒りが、突然、せきを切ったの感じました。私は、ワナワナ震えながらも、いじめっ子に猛反発して、口喧嘩になったのです。


「賞を取ったらそんなにいけないの! 悔しかったらあなたも賞を取ればいいじゃない! もう私に構わないで! 私は私の好きなことを一生懸命にやるわ!」


いつも大人しくて我慢強い私が奔流のように激変し、反抗したので、いじめっ子たちは驚いて、以後、私に近づいて来なくなりました。

目立たず大人しくすることを強いられていた昔の私を思い出すと、怒りが吹き出してきたのでした。

私がずっと我慢していたことを夢中で話し終えると、穏やかに私の話しを聞いていたドレームさんがこう言いました。

「メルヘンタロットは、引いた人にピッタリのカードが出るのです。あなたが引いたカードにはこんな意味があるんですよ」

そういうと、ドレームさんがカードの意味を教えてくれたのでした。


「冒険の準備をする時です。リスクをいとわず広大な未知の世界に心を開くのです。恐れることはありません! 自分の信じた道を行きなさい!」


カードの意味が私の心に響きました。熱いものが込み上げてきたのです。


「そうですよね。私が好きなことに一生懸命になってなぜいけないのでしょう。目立つことを恐れる私はもういません。私は自分の信じた道を行くだけです」


私は涙をボロボロ流しながら、言ったのです。祖父を恐れ、目立つことを恐れた私を、熱い涙が流し去ってくれました。

「ドレームさん、編物教室、絶対に開きます! 絶対に! 編物の楽しさを一人でも多くの人に伝えます」


私は未来に向けて歩み出したのです。自分の編物教室で、色とりどりの糸が一目一目編み込まれていく。やがて、生徒が自分自身の手で作り上げた作品が、誰かの手に渡り、その人を笑顔にする。そんな未来が、今は確かに見えているのでした。



信じた道を行くだけ!


<メルヘンタロット物語0番:終わり>



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