誰でもわかるDPC病院の収入の仕組み
DPC病院の収入の仕組みを整理するに至ったわけ
私はリハビリテーション部門の管理監督者として、これまでは主にリハビリテーションに係る病院収入の知識のみで責務を果たしてきました。しかし今回、病院運営をより包括的に評価し、戦略的な病院運営を具現化する役割の一端を担うことになりました。
そこで、病院収入の仕組みをより総合的に理解する必要性を感じたため、本noteでDPC病院の収入の仕組みを整理することとしました。私と同じように、今のDPC病院の収入の仕組みをスタッフに説明する自信が不足しているマネジャーのお役に立てると幸いです。
DPC算定の仕組み
DPC算定の仕組みを感覚的に理解するための図を下に記します。
まずは、図の上半分に注目してください。図の上半分は、DPC算定の全体像を示しています。このうち、病院の努力によって左右される包括点数の構成は以下の通りです。
① DPC算定=包括点数+特定入院料の加算+出来高点数+入院時食事療養費等
② 包括点数=診断群分類ごとの1日あたり包括点数×入院日数×医療機関別係数
③ 医療機関別係数=基礎係数+機能評価係数 Ⅰ +機能評価係数 Ⅱ +激変緩和係数
注)激変緩和係数とは、診療報酬改定時に推計診療報酬変動率が±2%を超えて変動するDPC対象病院に対し改定年度の1年間のみ設定される等の限定されたもの。
つまり、包括点数が病院収益に影響を与え、この包括点数は入院日数と医療機関別係数の影響を受け、医療機関別係数は各種係数(機能係数、機能評価係数 Ⅰ 及びⅡ )の影響を受けるということです。
新型コロナウイルス感染症の拡大と病院経営
すでに病院関係者以外の方もご存知のように、日本病院会などの3団体の調査によると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で全国の病院の6割強が4月から6月にかけて医業損益がマイナス(赤字)となっています。
非営利組織である病院であっても、利益がなければ経営破綻します。つまり、このままでは多くの病院がなくなってしまうかもしれないということです。そのような事態を回避してそれぞれが持続可能な病院になるためには、DPC算定の仕組みを理解し、具体的で戦略的な増収対策を立案して実行することが急務であると感じています。
持続可能な病院とするための増収戦略
先ほどの図を下に再掲します。
次は、図の下半分に注目してください。下半分は、2020年度改定の医療機関別施設数と基礎係数及び機能評価係数を上げるためのレバーを整理しています。
医療機関群は、大学病院本院群、DPC特定病院群、DPC標準病院群に分類されています。大学病院本院以外であれば、このDPC特定病院群を目指すことになりますが、その要件は① 診療密度、② 医師の研修の実施、③ 医療技術の実施、④ 補正複雑性指数の4つを満たし、さらにそれが大学病院本院群の最低値を上回る必要があります。
基礎係数は医療機関群で異なりますが、同じ医療機関群の中では基礎係数は同じであるため、同じ医療機関群の中でより高い順位を目指すには、機能評価係数 Ⅰ 及び Ⅱ を上げることが有効となります。
そのためのレバーが、機能評価係数を構成する要素となります。機能評価係数 Ⅰ を上げるには、看護体制の充実や条件がより厳しい総合入院体制加算や臨床研修病院入院診療加算、医師事務作業補助体制加算等の取得が必要となります。また、機能評価係数 Ⅱ を上げるためには、保険診療係数、効率性係数、複雑性係数、カバー率指数、救急医療指数、地域医療指数を上げることが有効となります。
これらを上げるためには、根本から運用を練らなければならないものもあれば、実際に運用はされているために欠落している記録のみ記載されるようになればいいものまで様々です。つまり、どのレバーを上げるのか、そしてそのレバーを上げるためには何が足りないのかを包括的に精査した上で戦略を立案する必要があります。
まとめ
DPC算定の仕組みを概観しました。
コロナ禍において、多くの病院が経営破綻の危機にさらされています。
地域住民が安心した生活を送る上で必要となる病院が持続可能となるためには、DPC算定の仕組みを理解した上で戦略を立案することが必要となります。
DPC算定を有利にするには、医療機関別係数を高めることが効果的であり、そのためのレバーは明確です。
自院の内外部の環境分析を行い、どのレバーをどのように上げるのか明確にすることが有効な戦略になるものと考えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考
田辺製薬(2020)『DPCはやわかりマニュアル 2020年4月改訂版』.
https://medical.mt-pharma.co.jp/articles/dpc-manual/pdf_2020/dpc_all.pdf
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