なぜ、企業は倒産してしまうのか?
経営者を除き、自身が勤めている企業が倒産することは、理解はしつつも実感は持てない方が多いと想像します。事実、私の交友関係で勤務先が倒産したという方は一人しかいません。
下の図は、東京商工リサーチによる全国企業倒産状況等の5年間のトレンドです。これを見ると、毎月数百の企業が倒産していることがわかります。
では、病院は倒産しないのでしょうか。下の図は、医療機関の倒産件数の推移を示しています。これを見ると、毎年10前後の病院が倒産していることがわかります。つまり、比較的公共性の高い企業である病院でさえも、倒産するのです。
ところで、”倒産”とは何でしょうか。帝国バンクによれば、倒産の定義は”企業経営が行き詰まり、弁済しなければいけない債務が弁済できなくなった状態”のことを指します。つまり、借金を期限までに返せずに、どうにもならなくなってしまった状態ということです。
倒産には、2つの処理の仕方があります。それは、会社を消滅させる”精算型”の倒産と、事業を継続しながら債務弁済をする”再建型”の倒産です。
会社更生法は、旧経営陣は原則としてその後の経営に関与できなくなり、より根本的で手間のかかる手続きのことを言います。一方、民事再生法は、旧経営陣が引き続き経営に関与できるため、比較的スピーディーに企業を再建できるという違いがあります。ちなみに、アメリカの「連邦倒産法第11章」や、イギリスの「アドミニストレーション」は、再建を前提とした倒産のことを言います。
なぜ、企業は倒産してしまうのか?
荒木博行・著の『世界「倒産」図鑑ー波乱万丈25社でわかる失敗の理由ー』によると、倒産の裏側には5つのパターンがあるようです。
① 過去の成功体験が強すぎて変化することができないパターン、② 脆弱なシナリオに依存して、何かがあったら終わってしまうパターン、③ 焦りから許容範囲を超えてしまうパターン、④ マネジメントがアバウトで雑すぎるパターン、⑤ 経営と現場の乖離により組織として機能しないパターンの5つです。このうち、①と②は戦略上の問題、③〜⑤はマネジメントの問題として整理されています。
各倒産企業から学ぶべき具体的ポイントを下の2つの表に整理します。これを概観すると、議論する風土の不足や外部環境の変化への対応の遅れ、不十分なマーケティングや組織マネジメントが倒産の契機となっているように見えます。ただ、これらの課題は、多くの方にも心当たりがある自社の課題ではないでしょうか。
世の中には、どんなに酷い経営であっても倒産しない企業もあります。それは、”売上増は七難隠す”ためと言われています。つまり、偶然の導き等で短期的にでも売り上げが上がれば、先ほどの課題は一旦水面下に隠れてしまうのです。ただし、水面下で消えてしまうわけではなく、いずれまた顕在化してくるのです。おそらく、多くの方に心当たりのあるこれらの課題は、一旦水面化に隠れているに過ぎないのではないでしょうか。
なぜ、企業は倒産してしまうのか。
その答えは、戦略上の問題とマネジメントの問題としてパターンが5つありました。その5つのパターンは、多くの労働者が自社の課題として認知しているであろう比較的身近と感じられる課題でした。それでも自社が倒産せずに経営が持続しているのは、売上増が七難隠してる可能性が示唆されました。
こうした課題が組織内に本格的に顕在化する前に皆で解決することができたなら、その組織はきっと物凄く強いんだろうなぁと空想しています。
(参考) 荒木博行著『世界「倒産」図鑑ー波乱万丈25社でわかる失敗の理由ー』