今、なぜ自粛が必要なのか
新年となり、例年であれば故郷に帰省したり旅行する人が多い時期です。しかし、帰省や旅行だけでなく、複数の人との飲食についても自粛が呼びかけられているのはなぜでしょうか。私は医療従事者ですが作業療法士というリハ専門職であり、感染症の専門家ではありません。しかし、この半年間、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)について独学で学んできました。そんな私が「今、なぜ自粛が必要なのか」について超簡単に整理します。
医療現場の今
現在、医療現場は逼迫しています。その理由として、COVID-19の感染者数の増加があります。こうした状況を背景として、軽症の感染者に限っては、宿泊施設や自宅で療養する方も増えているようです。しかしそれでも、感染者数のうち一定の割合の方が医療機関に入院している状況の中で、連日多くの感染者数が発生している状況では、いずれ医療機関の受け皿も限界を迎えることは容易に想像できます。
限りある医療機関の受け皿を超えないようにするために、感染者数を抑制する必要があります。COVID-19は飛沫と接触によって感染することがわかってきています。特に飛沫感染は、マスクなどをしない状態で約1.8m以内の距離で15分以上人と会話をするなどで感染しやすいとされています。また、接触感染は、ウイルスが付着した手指などで目や鼻、口を触ることで感染しやすいとされています。つまり、「人と人との接触」や「手洗いを行わないこと」で感染のリスクが高まるということになります。
そこで、感染者数を増やさないことを目的として、人と人との接触を減らすための自粛が広く呼びかけられているのです。
COVID-19が広がる理由
COVID-19は、症状が出る前から周囲の人を感染させることができます。症状が出てから周囲を感染させるというのであれば、症状が出た時点ですぐに行動を自粛すれば感染を最小限に止めることができます。しかし、症状が出た時には既に2〜3日前から接触した人に感染させている可能性があるため、知らないうちに多くの人に感染させてしまう可能性があるのです。さらに、感染させてしまった人がさらに別の人と接触することにより、感染者数は指数関数的に増加してしまうのです。
一方、医療機関では、COVID-19が院内に入り込まないように、入院時にPCR検査などを行なっているところが多いと思います。しかし、COVID-19の多くの症例は、暴露から5日で発症するとされています。したがって、入院時の検査では問題がなくても、入院後にまるで”後出しジャンケン”のように発症する可能性があるのです。
感染者を増やさない最も有効な手段
以上のことから、感染者を増やさないための最も有効な手段は、人と会う数日前にCOVID-19の検査を受けるということよりも、日常的に接触している人以外の人との接触を最小限にすることと、こまめに手洗いをすることなのです。
自粛期間も長くなり、我慢も限界という人は多いと推測します。私たち作業療法士は、対象者の生活の質を高めるために外出の実現もお手伝いする医療従事者です。だからこそ、自粛生活が及ぼすさまざまな弊害も理解しているつもりです。しかし、今、最優先すべきは「感染者を増やさないこと」だと考えます。
「わたし一人くらい自粛しなくても」ではなく、「わたし一人の自粛でも感染者を抑制できる」という気持ちに皆がなれればいいなと感じています。