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推しの靴を履いて考える
推しのおしゃべり
#推し の飲み会。
シェアハウスのリビングルームで、
自分の「推し」の映像をプロジェクターで壁に映して、
それを見ながら、昨日はたこ焼きを焼いて食べて、
おしゃべりをする、という会。
「推し」はおもしろい。
アイドルのファンなんだけど、
ファンと推しは違いそうだ。
参加者の一人のパルは、
「推しのためなら」
なんでもやるし、
もう一人のネネは、なんなら
「この世から消えてもいい」
と。
ライブには最高に気合を入れてメイクをし、
それは推しのためにきれいになることであり、
ほかのファンとの差をつけることではない。
純粋に、推しのためにきれいな女性でありたいためで、
ハコの大小問わず満員のライブハウスでも、
必ず推しとは
「目が合う」
んだという。
ケッコンと結婚
アイドルグループ30人を3週間かけて全員覚えたり、
その子たちが歌って踊ってくるくる回って一人ずつ映像にでてくる。
ときどき、
「あ、この子とケッコンしたい!」
くるくる回ってくるから、
「この子とも!」
と、複数とケッコンしたいらしい。
でもそのケッコンは結婚とは違うらしい。
結婚はするけど、それは自分だけの時間、
推しとの時間と空間をきちんと確保できないといけないし、
それを許してくれるパートナーでなくちゃいけない。
許してくれるんだったら、男でも女でもかまわない。
推しも十人十色
『推し、燃ゆ』には、こう書いてある。
アイドルとのかかわり方は十人十色で、推しのすべての行動を信奉する人もいれば、善し悪しがわからないとファンとは言えないと批評する人もいる。推しを恋愛的に好きで作品には興味がない人、そういった感情はないが推しにリプライを送るなど積極的に触れ合う人、逆に作品だけが好きでスキャンダルなどに一切興味を示さない人、お金を使うことに集中する人、ファン同士の交流が好きな人。
あたしのスタンスは作品も人もまるごと解釈し続けることだった。押しの見る世界を見たかった。
推しはオタクで粘着質で世界観がある。
推したからって見返りを求めず、
時間とパワーを使うことへの損得も考えない。
十人十色なんだから、そのうち推し活からフェードアウトする人もいるだろうし、
そのまま推しを抱いて若くなくなっていく人もいるだろうし。
わたし自身のモノサシで判断するんじゃなく、
推しってなんなんだろうか、
パルたちの靴を履いて考えようと思う。
なんかおもしろそう。
『推し、燃ゆ』 宇佐見りん 河出書房新社 2020年