幸福とかウェルビーイングとか仕事で感じたことある?
ひさしぶりにトレッキングシューズを履いて山に入った。
自伐型林業をしているミキさんの現場。
自伐型林業とは簡単にいうと、フリーランスの林業家。
木を伐って、木を売って、木を育てて、それを循環させて、収入を得る。
ミキさんの森は明るかった。
「鬱蒼と茂る」ではなく、適当に茂ってて、太陽の光が差し込んで。
しかも、ひんやりとしている。
2メートル幅の作業道を、ふたりでてくてく歩く。
考えてみれば、山とか森に入るのは、
登山のときかクルマに乗ってるとき。
山登りは登山道を歩くし、
クルマはもちろん舗装された車道を走る。
それ以外で山に入るってことは……。
あまりない。
ちなみに、ふらっと林業の現場に入ると、不法侵入になる。
山は国有林と民有林に分かれ、
民有林はさらに公有林と私有林があり、
林業の現場は、主に私有林。
つまり私有地だから、許可なく入ると「不法侵入」。
作業道を歩きながら、いろんな話を聞いた。
道のつくり方、森の役割、自伐型林業の生活のようす。
ミキさんが「手入れされてる山とそうじゃない山の見分け方、わかりますか?」と。
(なんだろう、明るさかな?)
「切り株があるかどうかですね」
ああ、考えてみればそうだ。
「新しい切り株じゃなくて、古いやつ。
ボロボロの切り株があれば、その森は5年前に手入れされてる。
朽ち果ててる切り株があれば、10年前に」
手入れされてる、とは、間伐がきちんとされているということ。
あたり一面ぜんぶ伐ってしまうことを「皆伐」といい、
間引くように伐ることを「間伐」という。
間引いた間伐材を薪などの原料として売り、
間引き終わった森林をメンテナンスし、
そうやって育った木を伐って、値がつく建築材などにする。
幸福感を感じられる、とミキさんはいう。
「同じ山をずっと面倒見るから」
林業の山は主に私有地。
林業者は、山主に委託されて木を伐る。
林業会社のメンバーは、
大きな機械を使ってがーっと伐り、
ここが終わったらあっちへ、と、作業現場を転々とする。
ところが、フリーの林業者である自伐型林業は、
身の程の機械を使ってちょこちょこと作業する。
「成長していく森を見るのはうれしいし、
山主さんとの関係性もつくっていける」
顔が見える関係。
林業はウェルビーイングなビジネススタイルなのだ。