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「相手の意見を否定しない」ってどういうこと?
実はそうでもない
それは、にこやかに活発にダイアログしてたワークショップだった。
数日後、参加していたひとりに感想を聞いていたら、
「いや、けっこう腹のさぐりあいでした」
と。
いろんな会社や役所から若手に集まってもらって、
街づくりのワークショップをした。
「どこまで話をしていいのか……」
表向きはにぎやかでも、
心理的安全性は確保されてなかった、ということか。
心理的安全性を得るためのひとつに、
「ここでは自分の意見が否定されない」
というのがある。
そのワークショップでも、ファシリテーターは何度も、
「否定しないようにしましょう」
というルールを繰り返していた。
相手の意見を否定しない
大隈塾でも、「相手の意見を否定しない」をダイアログの基本としていた。
そうすると、ときどき聞かれたのは、
「否定をしないということは、相手の意見をすべて受け入れないといけないのか?」
ということだった。
そうしたときのわたしの答えは、
「そういう意見もあるんだ〜、って思うことでいい。
いつかその意見が正しく思えることもあるかもしれないし、
そうすることによって、自分の選択肢にもなるから」
といっていた。
『だから僕たちは、組織を変えていける』では、
共感と同調、を説明していた。
「共感する」とは、相手の経験や感情をともに感じることであり、相手の意見や価値観をそのまま受け入れる「同調」とはまったく異なる(後略)
ああそうか。
相手の意見をそのまま受け入れるのは「同調」っていうだ。
「同調圧力」の「同調」ね。
わかりやすい。
今度からそう答えよう。
受けとめること
朝から本を読んで「我が意を得たり」だったから、
ドヤ顔を声に乗せて、clubhouseの黙読会でそれ話した。
そうしたら、心理士のデミちゃんが、
「ああそれね、カウンセラーの世界では『共感』と『同情』っていうかな。
共感はしても同情はするな、
相手とのバウンダリーはちゃんと持っておきましょう、って」
バウンダリー、境界線ね。
わかりやすい。
「それに、『受け入れる』んじゃなくて『受けとめる』、ともいうね」
本間正人先生の言葉らしい。
「共感」と「同調」で得意満面だったけど、
「受けとめる」と「受け入れる」の方がもっとわかりやすかった。
心理的安全性を確保するためには、
相手の意見を否定しないこと。
相手の意見を否定しないということは、
相手の意見を「受け入れる」のではなく、「受けとめる」こと。
そしてそこから自己開示が始まって、
腹のさぐりあいがなくなっていく。
『だから僕たちは、組織を変えていける』 斉藤徹 クロスメディア・パブリッシング 2021年