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憲法記念日と岸井成格さん

憲法記念日になると、岸井成格さんを必ず思い出す。

岸井さんは毎日新聞の特別編集委員(主筆も)で、
テレビでのコメンテーターとしても活躍していた。
大隈塾でも「岸井ゼミ」を2005年から数年担当してもらった。
内容はジャーナリズムなんだけど、
ジャーナリズムとはなにか、ということではなく、
世の中の見方やものの考え方、だった。

毎年ゴールデンウィーク明けの岸井ゼミでは、
5月3日の読売、朝日、毎日、日経、産経の各新聞の社説の読み比べ、
をしていた。
5月3日は、各紙ともに憲法について論じていたからだ。

ゼミ生たちにとって衝撃だったのは、
「新聞はどの新聞も同じことを書いている」
というのは、思い込みでしかなかったということ。
実際には「どの新聞も」読んでなかったけど、
そういうもんだとずっといわれてきたのを信じていて、
読んでみると、朝日と毎日と、読売と産経と、日経では大きく違っているのが、
憲法9条に関する主張だった。

もちろん岸井さんは憲法を守る護憲の立場で、
ゼミ生の大半もそうなんだけど、
「教科書をつくる会」の勢いがあったころだから、
憲法改正にシンパシーを持つ意見もあった。

大隈塾で講義する岸井成格さん

岸井さんの偉いところは、
そうした改憲派ゼミ生たちの話をちゃんと聞き、
読売と産経の主張にも「間違ってる」とはいってなかったところだった。
同じ新聞業界だからというのもあるかもしれないが、
岸井さんは、言論は自由である、
違う意見に対してもリスペクトするという、
民主主義の根幹にあるものを大事にしていた。

そんな岸井さんが、安倍晋三首相はじめ、
安倍支持者から屈辱的な批判をされた。
名指しで批判する新聞広告すらあった。

岸井さんは、安倍内閣が安保法制について、
国会での議論もなしに進めようとしていることを批判していた。
民主主義じゃないじゃないかと。
民主主義が終わってしまう恐れがあると。

これがこないだまで騒いでいた、
高市早苗大臣の放送法の問題につながっているし、
国会で話し合わずに閣議決定でことを済ませる政治は、
いまも変わらず続いている。

ということを思い出す憲法記念日。
朝日新聞の世論調査によると、
いまの日本国憲法を、
「よい」52% 
「よいとは思わない」38%

「変える必要がある」52%
「変える必要はない」37%

国会で憲法改正の議論を
「急ぐ必要がある」36%
「急ぐ必要はない」55%

憲法について、国会で、公開で、ちゃんと議論をする時期に来ている。
それが民主主義なのではないか。