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ビジネスもコミュニティも「特定多数」がターゲット
クルミドコーヒーの影山知明さんが、
「不特定多数ではないが、特定少数でもない」
特定多数をターゲットにビジネスを組み立てている、
と書いている。(『ゆっくり、いそげ』)
わたしは大隈塾コミュニティの運営をしているが、
コミュニティのそれも同じだと思っている。
売り手にとって自分が好きなもの、大事なもの、
それをわかってくれる人に売りたい、
顔が見える関係のなかでビジネスをしたい、
と思うのは自然だけど、
特定少数を相手にしていては、経営は成り立たない。
かといって、不特定多数をターゲットにした場合、
それはつまりお客さんの「消費者的な人格」を刺激しないといけなくなる。
つまり、
「できるだけ少ないコストで、できるだけ多くのものを手に入れようとする」
人格を引き出して、価格競争に陥ってしまう。
だから、特定多数をターゲットに。
特定多数とは金融分野での用語らしく(影山さんは、コンサルやベンチャーキャピタルの経験者)、
「金融商品取引法」では、49人までが「特定少数」で、
50人を超えると「多数」になる。
では、特定多数はどのくらいの範囲か、というと、
「顔が見える関係」とは言っても、それは知り合いだけの閉じた関係ということではなく、もう少し開かれた広がりを想定したものだ。(中略) もう少し複雑な情報のやり取りが可能な、人を通じて、ネットを通じて、直接・間接に声が届く距離にある人たち。そうした層をいかに一定の規模で形成できるか。それが業を成り立たせる前提になる。(『ゆっくり、いそげ』 p36)
しかもそれは、「価値観を共有している一つのグループ」ではない。
共感している、共鳴している価値観はいくつもあって、
その価値観ごとにグループをつくっている。
たとえば大隈塾コミュニティのように、同窓会的な要素もあるコミュニティでは、
「同期」というのが非常に強い価値観グループになる。
この「同期」という価値観を超えて一つの大きなグループをコミュニティとする、
と考えていたが、「同期」軸はなかなか超えられない。
人が大事にしている価値観は、必ずしもグループを超えて共有されるとは限らない。
であるならば、その価値観は大切にして、
だけどその境目をゆるくしていくようなマインドを生み出すようなコミュニティでないといけない。
それをどうやって仕掛けようか、考えている。
『ゆっくり、いそげ』 影山知明 大和書房 2015年