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道徳科 研究論文 シリーズ8

8. 具体的な事例 その5
  

   2年生研究授業


1. 授業概要
教材名:「およげないりすさん」
教科書:光村図書 道徳 2年
徳目:公正・公平
この授業では、泳げないために遊べないりすと、そのりすのためにどうすればよいかを考える動物たちの姿を通して、みんなと仲良くすることの大切さを児童に考えさせた。児童に、自分の好き嫌いや先入観にとらわれず、友達の気持ちを思いやりながら行動する判断力や心情を育むことを目標とした。


2. 研究協議での成果と課題
(1) 動作化を活用した授業展開の成果と課題
今回の授業では、資料の内容を児童の理解に落とし込み、動作化を通じて深く考えさせるために「役割演技」を取り入れた。これは前回の提案を受けた取り組みである。
成果
役割演技を通じて、児童は物語の登場人物の視点に立ちやすくなり、感情移入を深める工夫としての可能性が見出された。特に、動作化を通して「りすの気持ち」や「動物たちの考え」を共有する場面では、児童同士の協力的な姿勢も見られた。
課題
一方で、児童が役割演技に戸惑う場面が多く、動作化がスムーズに進まなかった理由として、次のような点が分析された:

  • 資料の理解が不十分なまま動作化に移行した。

  • 動作化に至る前段階の準備が不足していた。

この課題に対し、次のような具体的な改善案が提案された:

  • 役割読みの活用:国語の授業で行われる「役割読み」を導入し、登場人物の感情や行動を明確に把握した上で動作化に進む。

  • 動作化の段階的導入:物語の簡単な場面を例にとり、小さな動作から始めて慣れさせる。


(2) 児童の指示理解と対応の課題
授業中、教師の指示に対して的外れな応答を続ける児童が見られた。これは以下の可能性が考えられる:

  • 指示内容が適切に伝わっていない。

  • 作業目的が明確に示されていないため、児童が行動の意図を理解できていない。

改善案

  • 指示前の目的共有:作業に入る前に「なぜこの活動を行うのか」を児童に分かりやすく説明する。これにより、児童が活動の意図を理解しやすくなる。

  • 明確で短い指示:指示は簡潔かつ具体的にし、必要に応じて視覚的な補助(図や絵)を加える。

  • 個別対応:的外れな応答を続ける児童に対しては、個別にフォローし、理解を助ける手立てを講じる。


(3) 書く活動に関する課題
道徳科における「書く活動」の重要性についても議論が交わされ、次の課題が提案された:

  1. 時間確保の方法:書く時間を確保するための授業構成を工夫する必要性。

  2. 書けない児童への対応:書くことが苦手な児童が意欲を失わないよう配慮する工夫。

  3. 書く活動の意図と効用:書くことを通じて児童が考えを深め、内省を促すための意図を明確にする。

具体的な改善策

  • 書く時間を授業の後半に確保し、それまでの活動を通じて児童が自分の考えを整理しやすいようにする。

  • 書くことが苦手な児童には、箇条書きや絵を使った表現を認め、負担を軽減する。

  • 書く活動を「自分の考えを振り返る手段」として位置づけ、その効用を児童にも伝えることで、意欲を高める。


3. 今後の取り組み
研究協議を通じて得られた成果と課題を踏まえ、次回の授業に向けて以下の取り組みが提案された:

  1. 動作化の効果を最大化する授業設計

    • 動作化の前段階として役割読みを導入し、児童が登場人物の心情や行動を十分に理解した上で、動作化を進める。

  2. 指示理解を助ける工夫

    • 指示の前に活動の目的を共有し、児童が何をすべきかを明確にする。視覚的な補助や個別フォローを活用する。

  3. 書く活動を通じた思考の深まり

    • 書く活動を計画的に授業内に組み込み、児童が自分の考えを言語化しやすい環境を整える。


4. 振り返りと展望
今回の授業では、動作化や発問を通じて児童の考えを深める工夫が一定の成果を上げた。一方で、動作化を効果的に行うための準備や、指示理解の工夫、書く活動の実践方法についての課題が浮き彫りになった。
今後の授業では、これらの課題を解消する具体的な手立てを試行し、児童一人ひとりが道徳的価値観を主体的に考え、行動に移せる力を育てる授業を目指していきたい。