【11日目】感情コントロールと「アタマ」の働き(ニンゲンのトリセツ)
◆感情はココロから「自動的に」出てくる
『三つのパーツ』の話を続けましょう。
何度も言いますが、僕たちは「カラダ」「ココロ」「アタマ」という、三つのパーツの集合体です。カラダが他のパーツときれいに分かれているように、ココロとアタマもそれぞれ別の働きをする別のパーツです。ここをよく押さえておきましょう。
さて、別のパーツである、ということは、こういうことが言えます。
「アタマで感情を直接コントロールすることは不可能である」
これはどういうことなのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。
そもそも、感情というのは自動的に出てくるものです。
あなたは怒る前に「よし、相手が失礼なことをしたから、今から怒ろう!」と考えていますか? また、悲しい映画をみながら「このシーンは悲しいシーンだから、泣かなければ」と考えて泣いていますか?
もちろん答えは「NO」ですよね? 失礼なことをされたらカーっと怒る、悲しいシーンを見たらドバドバ泣いてしまう、これが感情というものです。ですから、感情というものは「意思」と関係なく出てくるものであるといえます。
これは、ココロが感情を出してくる基準というものが、単純に「好き嫌いゲージの数値と針の動き」だけだからです。
◆感情が発生する「メカニズム」
ココロが感情を出してくるまでには、まずカラダの働きがあります。カラダが目・耳・鼻・肌・舌などの感覚で、周囲の情報を集めます。いわゆる五感というやつです。それらが感覚神経を通して、脳に送られます。送られた情報は脳が処理し、僕らが「見ている景色」や「聞いている音」などになります。
その後、脳にある「アタマ」というパーツが、それが自分にとってどういうことなのか? という判断をします。ここには『習慣』や『信念』という概念が大きく関わります(後で詳しく取り上げますね)。
そうした「アタマの判断」が、ココロに送られます。そうした後、ココロが好き嫌いゲージを使って「モトの量と変化」をはかります。こうしてようやく『感情』というものが起こってくるのです。
カラダ → アタマ → ココロ
という順番なんですね。感情が生まれるメカニズム、これをよく覚えておいてくださいね。
分かりやすく例をあげましょう。例えば誰かのお葬式で、お坊さんのアタマにハエがとまってコスコスしているような、ちょっと面白いシチュエーションになってしまったとしましょう。
まず、カラダがこれを「見る」という動作をします。「見る」というのは、目が光の情報を受け取り、視神経を通して脳に送る現象です。
この現象を通して、次はアタマが「お坊さんのアタマにハエがとまってコスコスしている」と認識します。
その認識がココロに送られ、ココロが「面白い」と思ったら(好き嫌いゲージが「好き」寄りに動く)、ココロは「笑い」という感情を返してきます。
返ってきた「笑いたい」という感情を、もう一度アタマが吟味します。そして……お葬式ですもんね、アタマは普通は「笑っちゃいけない」という判断をします。そうして、ココロは「面白い」と思っているけど、アタマで「面白いけど、笑わないでおこう」という葛藤が発生するわけです。
こういったことも、やはり「アタマ」と「ココロ」が別のパーツだから起こる現象です。判断の出どころ、基準が全く別なのです。
◆「モトあつめがしたいココロ」とアタマのギャップ
ですから、です。僕たちが普段「考えているパーツ」である「アタマ」で、普段「好き嫌いゲージだけを見ているパーツ」である「ココロ」を直接コントロールすることはできないのです。
ココロというのは、常に「好き嫌いゲージの量と針の動き」だけを見ています。なぜかというと、ココロのしたいことというのはたった一つ「モトあつめ」だけだからなんです。
ココロには常に「モトを集めたい」という願望があり、いつでもそのためにカラダを動かそうとします。その「カラダを動かす命令」こそが『感情』なのでしたね。感情や気分、衝動というのは、ココロが「そう動くことでモトを集めなさい」とカラダに命令をしている結果なんです。
では、ココロがコントロールできないのだとしたら、僕たちは普段どうやって行動を律しているのでしょうか。
先ほどの「お坊さん」の例を思い出してください。僕たちの「笑いたい」という衝動を押さえているのはどこでしたか? そう、答えは「アタマ」ですよね。僕たちは普段、アタマで行動を律しています。
つまりです。僕たちがコントロールできるのは「アタマ」なんです。前回、僕たちの「自意識」というものはこの「アタマ」の働きによるものだと書きましたが、結局僕たちが直接考えてコントロールできるのは、この部分だけなんです。
ですから、アタマをコントロールして上手に生きていきましょう!
◆アタマも「自動的に」判断している
……というふうに言えてしまえばいいのですが、なかなかそうもいかないものですよね? 実は僕たちはこの「アタマ」すらも、自分で十分にコントロールできていません。なぜなら、アタマにも「自動的に働く」機能があるからです。それが先ほど出てきた
『習慣』
や
『信念』
というものです。
例えば、世の中には「犬が怖い!」という人がいます(犬好きの筆者には信じられませんが)。この人たちがどうして犬を怖がっているかというと、それはアタマの中のどこかに
「犬は怖い生き物だ」という『信念』
が眠っているからなんです。僕たちは普段こういう『信念』に基づいて、世の中にあるものが「自分にとってどういうものか」を判断しています。この『信念』は、年齢を重ねるごとに増えていきます。そして、年齢を重ねるごとに、強固なものになっていきます。
僕たちは「犬を怖がる」という感情そのものを変えることができません。なぜならそれはココロが自動的に出してくる「感情」だからです。ですが、もし先ほど出てきた『信念』である「犬は怖いものだ」という部分を変えることができれば、実はそののちにココロが出してくる「感情」を変えることができるものなのです。
こういう方法で、ココロのあり方を変える方法として、良いツールがあります。次はそれについて詳しくお話ししますね。