【14日目】「習慣」と「心配」のメカニズムとモト(ニンゲンのトリセツ)
◆ABC理論と『三つのパーツ』
ABC理論のあらましは、ご理解いただけましたか?
実はこのABC理論は、例の「三つのパーツ」の話とかけあわせると、とてもスムーズに実生活に取り入れられるようになります。
実は、現在の臨床心理学の世界では、僕の言う「ココロ」と「アタマ」は特に区別されていません。ですから、このABC理論の『B』と『C』の「出どころが違う」という僕の考えはやや異端なのかもしれません。
ですが、やはり「感情を出すパーツ」と「思考をするパーツ」を分けて考えたほうが、自分自身をコントロールしやすくなると僕は考えています。なぜなら、モトというものを通して考えると、やはりこの二つは明確に「出どころが違う」と言い切れるからです。
◆思考・信念の出どころ『アタマ』
そもそも「出どころが違う」のだから、『C』である「感情」を、僕たちは直接コントロールできないと言えます。僕たちがコントロールできるのはむしろ『B』の部分、つまり「思考」「信念」「習慣」の部分なのですよね。ここは、いわゆる「考え方」次第で、変えたり手放したりできる部分なんです。
もしあなたが、ネガティブな気持ちや感情に悩んでいるのだったら、僕たちが変えられるのはその「気持ち」ではなく、その気持をわき起こしている『B』だ、ということなんです。
◆『信念』を隠している『習慣』
ところが……前回の話にもありましたが、僕たちはこの『B』に、自分自身で気がついていないことがよくあるんです……本当によくあるんですよ。前回は「当たり前」という表現を使いましたが、僕たちが「当たり前」だと思って生きているこの根深い『B』のことを今後
「習慣」
と呼びます。とても一般的な言葉です。僕たちは年を重ねれば重ねるほど、この「習慣」というものを使って生きようとしがちになります。
習慣、というのはアタマの働きです(脳の機能です)。アタマはとても忙しい器官なので、前に起こったことと同じことが起こったとき、同じやり方で切り抜けようとします。そうしたら、考える手間が省けて、アタマが楽できますからね。これが「習慣」というものです。
習慣というのは、とても便利なものです。例えば、クルマの運転を普段からしている人は、運転席に座ってしまえば、もう目的地までの運転を始めてしまえます。いちいち「エンジンをオン、ミラーをチェック、ギアを入れてハンドルを切って、アクセルを踏んで……」なんてことを考えながら運転をしてはいません。これらはすべてクルマの運転という「習慣」でおこなっています。このように習慣とはとても便利な機能でもあるんです。
ですが、ココロが沈みがちな人というのは、「ネガティブな考え方」が習慣になってしまっているものなんです。
◆ネガティブな『習慣』が自分の中にあるか探そう
例えば……明日は体育の授業でマラソンだ……ヘトヘトに疲れるのは嫌だなぁ……という考え。これもなんとなく習慣で出てきてしまう『B』と『C』の一つです。
明日の時間割に「体育」と書いてあるのを見ただけで、ネガティブな気持ちが出てきているわけです。これはアタマが勝手に『B』(体育の授業でマラソンがあるだろう、そして疲れるだろう)を想像して、そしてココロに送って『C』(嫌な気持ち)をわき起こしているんです。
これは初級編でもくわしく取り上げますが、僕たちはこの「習慣」による「心配」というものを、しょっちゅうしてしまいます。前もこんなことがあった、だから次もこうだろう、嫌だなぁ……という具合です。
実はこういう「心配」はとても無駄なモトの使い方です。ココロはモトでできていて、注目したもの(この場合は「未来の自分の想像図(!)」)にモトを飛ばしますので、「心配」というものは、すればするほどモトを減らします。心配しているときに気分が沈むのは、モトが減って好き嫌いゲージが下がるからです。
ですから、こういう『B』に気づいて変えていけば、自分の人生をより楽しく、充実したものにできますよ、という話なのですが……
◆「なぜそうなのか」を知るためにはモトの『奥義』が必要だ
ではどうやってこの『B』を変えていけばいいのか? どういうきっかけで根付いた『信念』『習慣』を改めていけるのか? という話になると……実は、もうちょっと「モト」の深い知識が必要になってしまいます。それは例えば
・人に優しくしたほうがいいのはなぜか?
・人と仲良くしたほうがいいのはなぜか?
といった、今まで「良いこと」だと教えられてきたようなことが「どうしてそうなのか?」を、モトを通して考え直してみる必要があるからなんです。
実は、こういった「良いこと」というのには、モトを通して考えると「明確な理由・必然性」があることが分かってきます。それらは「モトあつめ」をするために重要なんです。モトあつめのために重要なんだから、ひいては「自分のため」に一番効率がいい方法なんです。
こういうところまで理解するためには、まだまだ「モト」についての知識が必要になるはずです。この辺のくわしい話は上級編でみっちりしますので、ですから今は
・三つのパーツ
・ABC理論
・信念と習慣
このくらいのことを押さえておいてください。実際、これだけの知識でも、日々の生活は少し変わるはずです。
では、モトの知識を深めるために、さらに一歩先の話をしましょう……次は三つのパーツの最後「カラダ」についての話です。
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)