#7 JクラブのPLの営業収益の内容を調べてみた(入場料・賞金・配分金)
公認会計士のゆうと申します。
数あるnoteの記事からご覧いただき、ありがとうございます。
前回はJリーグやJクラブが公表している決算書に記載の勘定科目の大枠について説明をしましたが、今回はPLの勘定科目の営業収益の内容をみていきたいと思います。
お時間のない方は、目次から4.まとめをご覧ください。
1.PLの勘定科目(営業収益)について
勘定科目は、2020年度の【Jクラブ個別経営情報開示資料】に沿って、開示されている範囲で説明いたします。
下記表がPLに計上される勘定科目及びその内容となります。表のベースはJリーグのHPで開示している【Jリーグ クラブ経営ガイド】を参考に作成しています。
2.勘定科目の内容の補足
ここからは、私が個人的に気になった勘定科目について深堀をしていきたいと思います。なお、深堀した箇所の※と上記1.の表の注はリンクしています。
入場料収入
※1:リーグ戦やカップ戦の入場料において、近年チケット価格の変動制であるダイナミックプライシングを導入しているクラブが増えております。ダイナミックプライシングとは、試合日程、席種、市況、天候、個人の嗜好などに関するビッグデータ分析を基に試合ごとの需要予測を行い、需要に応じたチケット価格の変更を自動的に行なうことで、ニーズに応じた適正価格で販売を行う仕組みです【*1】。横浜FMが 2018年シーズンからダイナミックプライシングをいち早く導入し【*2】、2019年からJリーグとして導入を開始しています【*1】。
*1【価格変動制「ダイナミックプライシング」によるチケット販売開始のお知らせ | ニュース | 横浜F・マリノス 公式サイト (f-marinos.com)】
*2【価格変動制「ダイナミックプライシング」による+チケット販売を実施いたします。 (jleague.jp)】
ダイナミックプライシングを導入することで、クラブとして興行の価値に沿ったチケット価格を販売することができ、また年間試合数が限られている中で、興行の価値が認められたクラブは入場料を伸ばす良い施策であります。その一方で、サポーター側からすると、今までの値段でチケットを購入することが試合によっては難しくなるデメリットもあります。
※2:通常のリーグ戦やカップ戦以外に開催する救済試合、引退試合、慈善試合の取り扱いについて、【Jリーグ規約】に定めがあります。これらの試合は、原則としてクラブの収益には計上されないことが下記の引用から確認できます。
Jリーグ配分金
※3:Jリーグ配分金は、【Jリーグ規約】の第188条~第121条に記載があり、公益財団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が得た収益を原資に配分対象のJクラブへ支給されることが確認できます。
その他の収入のうち、賞金
※4:Jクラブがリーグ戦、カップ戦、天皇杯で獲得することができる2021年の賞金は以下の表の通りとなります。
このうち、Jリーグの賞金はJリーグHPの【Jリーグ表彰規程】の第2条の定め、富士ゼロックススーパー杯はJリーグHPに開示されている【広告】、ルヴァン杯はJリーグHPの【JリーグYBCルヴァンカップ 大会概要】、天皇杯は日本サッカー協会HPの【開催規程】から金額が確認できます。なお、年度により受け取れる賞金の金額が変動する可能性があり、2020年は新型コロナウィルスの影響により減少しています(JリーグHPの【2020シーズンの表彰および賞金ついて】)。
3.Jリーグ配分金の内容について
先程の2.の記述では、Jリーグ配分金の財源の記載だったので、ここからはJクラブ側の視点にたってみていきたいと思います。
Jリーグ配分金は、【Jリーグ配分規定】第3条に記載の5つで構成されおり、事業協力配分金とtoto交付金は全てのJクラブ、理念強化配分金はJ1の1位から4位のクラブ、降格救済配分金はJ1とJ2の降格クラブ、ACLサポート配分金は支給年度にAFCチャンピオンズリーグに出場したクラブが支給対象となります。
また、各年度の配分金の額等の決定は、支給年度のシーズンの始まる前日までにJリーグの理事会において決定されます(【Jリーグ配分規定】第4条)。また、その後の開催される理事会で審査に合格したクラブに支給がされます(【Jリーグ配分規定】第5条)。
4.Jリーグ分配金の金額について
Jリーグ配分金は、2017年にJリーグと英動画配信大手のDAZN Group(契約当時はパフォーム・グループ)との間で多額な放映権契約を締結したことで2017年シーズンより10年契約約2,100億円で締結、2020年8月に契約の一部を変更し、2017シーズンより12年契約約2,239億円で締結がされたことで(JリーグHPの【JリーグとDAZNの新たな放映権契約について】)、2017年シーズン以降に配分金額が大きく増加しました。また、DAZNとの契約のタイミングからリーグ戦の賞金も増加していることが改訂前の【Jリーグ表彰規定】第2条から確認できます。
具体的なJリーグ分配金の金額は以下の表の通りとなります。(2016年~2017年の金額【DAZNによる破格マネーでJリーグ各チームの懐事情はどう変わったか?|@DIME アットダイム】、2019年の金額は【Jリーグ、理念強化配分金の制度を変更! “翌年10億”廃止で“安定支給”へ | ゲキサカ (gekisaka.jp)】、2020年~2021年の金額は【2021年度配分金について | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) (jleague.jp)】をもとに作成)。
また、理念強化配当金及び降格救済金は以下の通りで、複数年にわたり支給がされます。なお、理念強化配当金は新型コロナウィルスの影響により2020年シーズンより停止されています。
DAZNとの契約後の2017シーズン以降はディビジョン毎に支給金額の格差があり、またJ1内でも上位4クラブとそれ以外で理念強化配当金による支給金額の格差があることから、分配金が各クラブの運営を大きく左右する収益となりました。また、クラブ運営会社の親会社から支援金をもらえないクラブは一旦戦績を悪くすると元のポジションや戦力に戻すまでに時間がかかると窺えます。
5.まとめ
6.次回
次回は、PLの勘定科目のうち、営業費用の内容についてみていきたいと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!